ピニャタ

 娘はこのごろクリスマスに興味が出て来たのか、しきりに「クリスマス」という言葉を口にして、家にあるクリスマスの絵本を読みたがる。絵本を読んで欲しいとき、娘は「『おっきょちゃんとカッパ』するー」とか「『こんあきちゃん』するー」とか言うことになっている。家にあるクリスマスの絵本は『クリスマスまであと九日』と『ウェールズのクリスマスの想い出』の二冊で、『ウェールズのクリスマスの想い出』はちょっと字が多くて難しいので、読むのは自然と『クリスマスまであと九日』になる。

クリスマスまであと九日―セシのポサダの日

クリスマスまであと九日―セシのポサダの日

 朝、保育園に行く前だとか、夜、ごはんを食べたあとだとかに、娘は、
「『クリスマスのここのか』するー」
 という。そうすると、時間があれば、僕か妻かが家の中のどこかに転がっているこの絵本を探して来て(良く読む絵本はだいたいいつも本棚にはささっていない。寝床で読んだときは寝床に、じゅうたんの上で読んだときはじゅうたんの上に置いてあるから、前回どこで読んだかを思い出して、そこに絵本をとりに行く)、読む。
「ととのおひざで読んであげようか?」
「ととのおひざで読む」
 それで『クリスマスまであと九日』を読み始めるんだけど、この絵本もけっこう字が多いから、とばしとばし読んで行くことになる。メキシコのクリスマスの話で、サンタクロースなんかは出て来ない。ポサダというパーティーが開かれる。ポサダでは、ピニャタと呼ばれる紙でつくった人形が庭の木につるされる。ピニャタは中が空洞になっていて、中におかしを詰めて、それをスイカ割りみたいに目隠しをした子供が棒で割ってこわし、散らばったお菓子をみんなで拾う、ということをするらしい。そのポサダの数日間が、セシという名前の女の子を主人公にして語られる。
 セシがピニャタを買いに行く場面がある。何ページかにわたって、店先につるされたピニャタが描かれる。牛、ロバ、象、ウサギ、ウサギ人間、クマ人間、人参、星、などいろんなピニャタが並んでいて、娘は、
「**ちゃんはこれ」
 といってロバのピニャタを指さす。
「ととは?」
「ととは、クマがいいかな」
「かかは?」
「カカはウサギかな」
「ぶーぶーおじちゃんは?」
「ぶーぶーおじちゃんはこれがいいかな」
 ぶーぶーおじちゃんというのは妻の弟のこと。僕らの家族の中でただ一人車の運転ができる。ので、水族館に行くときとか、動物園に行くときとかはぶーぶーおじちゃんに車を出してもらう。ぶーぶーを運転するおじちゃんなので、ぶーぶーおじちゃんと呼ばれるようになった。それほど頻繁に顔を合わせるわけではないのだけど、娘はわりとぶーぶーおじちゃんのことが気になるらしく、ときどきこうやってぶーぶーおじちゃんの名前を口にする。
 今年のクリスマスは工作でひとつピニャタをつくってみようか、と妻と話している。