イギリス旅行三日目

noise-poitrine2018-08-30

外国で日本人に会い、同じテーブルで食事をしたりしたら、今だったらツイッターのアカウントを教えあったりするんだろうけど、当時はスマホツイッターも存在しない。せめてここだけは行った方が良いっていうところありますか? くらい聞いて会話をしたいところだが、小心者の19歳の男にはそれができない。
フォークストンに行こうと思って乗った電車からの景色はいまでもなんとなく覚えている。広々とした野原が続いている中に突然原子力発電所みたいな建物が現れて、その場違いさと巨大さが不気味だった。僕は薄々自分が乗っている電車がフォークストンに向かっていないことに気がついていた。もうとっくにフォークストンについていても良いはずの時間だったし、風景はどんどんさみしくなって行く。このままこれに乗っていてはとんでもないところに連れて行かれるんじゃないか。引き返す電車はあるのか? もし引き返せなかったらどうなっちゃうのだろう。しかし向かいに座っている老人、僕にフォークストンへの行き方を教えてくれた老人に、どうやって話を切り出したら良いかがわからず、黙って、まずいな、困ったな、どこで電車を降りようかな、とジリジリと脂汗をかいていた。