「KARASU」がすごく良かった

バイトを早退してバレエを観に行った。「創作バレエの夕べ」といって、石井潤さんと石原完二さんが構成・振り付けした作品を三つ上演してたんだけど、二つ目の「KARASU-闇の祝祭-」というのがとても良かった。衣装はシックでかっこよかったし、音楽もちょっと変わってておもしろかった(ポリスの「ロクサーヌ」をだみ声で歌ったカバーとか)。空間の使い方にもはっとさせられたし、ダンサーのからだの動きも印象的だった。20代のダンサーに混じって30代後半か40代くらいに見える女の人が2、3人踊っていたのだけれど、その人たちのどっしりとした存在感に眼をひかれた。
見ている最中に、ふと、今僕が見ているこれは、人間が何万年もかけて積みかさねて来たもののひとつの到達点なのだな、という大げさな感慨のようなものがわいて来た。舞踊というのはきっと原始時代からあったものなのだと思うけど、原始時代の舞踊は今のものほど洗練されていなかったはずで、「手を広げてひらひらさせてみたらなんかキレイやね」とか、そんな程度だったのだと想像する。それが、何万年もかけて、人類はバレエとか太極拳とかローザスとかパラパラとかいろいろ考えだして、ダンスを今あるようなものにかたちづくって来た。ダンスが今みているこれになるまでにどれだけの人が踊って来たのか、今見ているこのダンスにはどれだけの人の人生の時間が染み込んでいるのか、とか思って、ダンスを見ながら原始時代からの長い長い時間の先っぽに立っているような気持ちになり、くらくらした。
三つ目の「カルミナ・ブラーナ」は、みさこさんの衣装(肌色の全身タイツにウルトラマンみたいな赤い模様が入っている)がハレンチなように僕には見えて、正視できなかった。あの衣装で自転車に乗っている場面(創作バレエなので自転車も出てくる)は露出狂にしか見えなかった(露出狂に見せる演出だったのかもしれないけど)。セックスを意識したような振り付けも正視できなかった。自転車とか化粧品の販売員とか居酒屋とかセックスとかを使うのは、お客さんにダンスを理解してもらおうという意図があったのかしら。分かりやすい紋切型の物語にダンスをのっけることで、ダンスをより身近なものに感じてほしいとか、そういった願いがあったのかしら。しかし、僕は逆にひいてしまった。
「KARASU」は理解できなかったけどおもしろかった。きっと、ダンスを見るときは理解しようとか思わずに見たほうがおもしろく見られるんだろうと思う。