イギリス旅行その3

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 昨日の日記に書き忘れたけど、飛行機がヒースローについたのはロンドンの時間で朝の9時ごろだった。それから入国審査を通ったりオイスター・カードを買ったりなんかして、地下鉄に乗ったのは10時くらいだったか、それとも10時半くらいになっていたのかな。

 地下鉄の車両は狭くて、人が座席の両側に、両側というのは真ん中の通路を挟んで進行方向の右側の座席と左側の座席に、向かい合わせに、対面して座っていると、その間を通り抜けるのにちょっと苦労するくらいの狭さだった。

 途中から乗ってきて僕らの向かい側に座った男女のカップルが、落ち着いた静かな声でずっと何やらしゃべってて、アメリカの英語と違ってやたらと舌を丸めないそのブリティッシュ・イングリッシュの響きが僕は好きなものだから、何をしゃべっているのか会話の中身は全然わからないけれど、僕はもう、この二人の会話を一生ずっと聞き続けていたい。

 着ている服がどうもおしゃれだ。ひとつひとつの靴だの服だのは日本でも売ってるメーカーのやつだけど、日本で売ってるのとちょっと色が違ってたりして(あるいは、日本で売っててもわざわざ選んで買わないような色だったりして)、例えば日本では黒しか見かけないブーツが、このカップルの女性の人は茶色の色をチョイスして履いてて、鮮やかな色のレインコートだかウィンドブレーカーだかを女の人も男の人も着ていて、どんな色だったかは忘れちゃったけど、黄緑とか紫とか、そんな感じの色だったと思うが、とにかく色の組み合わせが良くて、ああ、ロンドンの人ってこんなにおしゃれなのだなあ、とため息が出る。

 サウス・ケンジントンで電車を降りて、早足で歩く人たちの邪魔にならないようにさっさか歩いて地上に出る。改札を抜けると、なんかもう、映画の中に飛び込んじゃったんじゃないか、というようなイギリスの街並みが普通にまわりに広がっていて、四方八方から忙しそうにこちらに向かって歩いてくる人たちは映画のエキストラなんじゃないか、と思うような映画じみた歩行者たち。二階建ての赤いバスが本当に道路を走ってるんだな、あれはフィクションでも伝説でもなくて本当に走ってるバスだったんだな、と笑ってしまった。

 もう5月になろうかというのに冬の寒さだ。ダウン・コートを持ってくるべきだったかな、と思うほど。

 カフェで売ってるパンは信じられないくらいでかくて、クロワッサンがほとんどランドセルくらいの大きさで、外のテーブルでは若い女の人が二人か三人でカフェオレか何かを飲みながらそれを食べている足元を鳩が歩き回ってパンくずをついばんでいる。

 「地球の歩き方」の地図で自然史博物館とヴィクトリア・アンド・アルバート博物館を探し、駅の北のほうだな、と確認して、スマートフォンの方位磁針で北を探しつつ歩く。目の前にあらわれた博物館は予想以上に巨大で、え、こんなに大きかったの? これではとてもかなわない、文化のレベルが日本とは段違いなのではあるまいか、と唖然とした。

 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のクロークに三人分のリュックサックを預けた。今回の旅行は、スーツケースは持ってこず、三人がそれぞれ自分が持っている中で一番大きなリュックサックをしょって来たんだった。Tシャツだのパジャマだのは何年も着古した古いやつを持って来ていて、最終日にそれらの服を捨てて、空いたスペースにお土産を詰めて帰る作戦。クローク代がリュック三つで13ポンド。今は1ポンドが200円くらいだから、2600円くらい。これでやっと身軽になった。

 そろそろお昼どきだったので、駅前にいくつかあったカフェのどれかに入って何か食べよう、と再びサウス・ケンジントンの駅の前まで歩いて戻る。さっき見たでかいパンを売っていたカフェの前を通りかかったら、外のテーブルにいた若い女の人たちはどっかに消えていて、代わりに鳩がテーブルの上に乗っかって、半分くらい残ってるでっかいパン、自分の体の二倍くらいあるでっぱいパンを猛烈な勢いでつついていた。うわ、ロンドンってワイルドな場所だな、人間だけでなく鳩もパワフルなのだな、と思ったものだ。

 

 今日はもう寝る時間なので、続きはまた明日以降に。