明日から東京入り

年末は錦の商店街でバイト。おまわりさんがやって来て、押さないでください、二列に並んで歩いてください、と大声を出して交通整理をするくらいの混みよう。
お父さんに背おわれた小さな女の子がにこにこ笑いながら、すれ違う人たちの肩にちょこんちょこんと触れながら通って行く。僕の眼とその子の眼が合うと、女の子は笑いながら僕の肩にちょこんと触れた。なんか祝福を受けたみたいな気分になり、師走の忙しい疲れもどこかに吹っ飛んでしまうような嬉しさ。

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先々週くらいに図書館のビデオ室で『典子は、今』のDVDを観た。付録のブックレットに監督のコメントが書いてあったんだけど、そこで監督は、私は「愛」という言葉を聞くと白々しい気持ちになる、といったようなことを書いていた。「愛」なんかよりも「同情」の方が人間らしい感情なのじゃないか、みたいなことを書いていて、僕はそれになるほどなあと感心してうなってしまった。
街中で見ず知らずの人を刺し殺す人がたまにいるけど、そういう人たちは刺し殺される人たちに同情しなくちゃいけない。刺し殺される人の痛みに同情し、人生の時間を強制終了されちゃう無念さに同情しなくちゃいけない。刺し殺された人の家族の悲しい気持ちに同情しなくちゃいけない。
愛なんかがあるから憎しみも生まれるんじゃないかしら。クリスマスにいちゃいちゃと愛し合っているカップルなんかを見て、「なんか俺って誰にも愛されてないよなー、俺も愛が欲しいなー」とか思っちゃうと、「私を愛することをしようとしない他者」が憎らしくなって来て、そんで誰か刺し殺したくなったりもするんじゃないかしら。愛なんてどうでもいいから、他者に同情するという、シンパシーを感じるという、そういうものに私はなりたい。