ワラブキ、大雪、ブルースマン

 東京の地理が気になってきた、ということを前に書いたけど、東京の地図をみたりしているうちに、昔の東京がどんなだったか、ということにも興味が広がって来て、それで田山花袋の『東京の三十年』を買って来て読みはじめたら、「しかし、宮益の坂を下りると、あたりが何処となく田舎田舎して来て、藁葺の家があったり、小川があったり、橋があったり、水車がそこにめぐっていたりした。私はそこを歩くと、故郷にでも帰って行ったような気がして、何となく母親や祖父母のいる田舎の藁葺が思い出された。小さい私は涙などを拭き拭き歩いた」とか書かれていたりして、へえ! 渋谷にワラブキ屋根があったのか! とびっくりする。そりゃそうか。昔はどこの家もワラブキ屋根だったんだものな。でもなんか今の渋谷からはちょっと想像がつかない。
 「あの時分、世界が何月何日を以って破滅するという大袈裟な読売が市中に出て、大騒ぎをしたことがありますが、覚えていらっしゃいますか。」
 私はこう訊くと、主婦は、
 「そう、そう、そういうことがありましたね。よく覚えていらっしゃいますね。幾日が大雨、幾日が大地震、幾日が大つなみっていう風に、その読売の紙に絵が書いてありましたね。」
 ああ、明治の日本の新聞とかって、すげえテキトーなことやってたんだよなあ、と嬉しくなる。

 実家からチョコレートがとどいたのでお礼の電話をすると群馬は雪がすごいらしい。京都は昨日の朝にどかどか雪が降って、わ、これは積もるなあ、と思ったんだけど、けっこうすぐに溶けちゃった。しかし群馬の実家では庭の雪にものさしをぶっさしたら六十何センチとかあったということで、なんでも群馬では百二十年ぶりの大雪だとのことで、母もこんなに雪が降ったのはうまれて初めてだといっていた。

 本屋にいったら『新潮』3月号が平台に山盛りつんであって、表紙には「石井桃子の図書館」の文字がある。これはもう買うしかない、と買って帰る。

 1月号から表紙を並べて良く見てみたら「SHIN」と読める。このあと「CHO」と続くのかしら。しかし7月号からあとはどう続くのかしら。
 まず読んだのは連載「電車道」。この連載は毎回明治の話が続くことになるのかな。「ある年の正月に外が騒がしいので兄妹と一緒に出て行ってみると、門付が来ていた。盲目の若い女芸人で、編み笠をかぶり、桃色と臙脂の縞の派手な着物に日和下駄を履いて、三味線を弾きながら鳥追い歌を歌っていた。足を開いてがに股になって、まるで悪霊に取り憑かれたかのように上半身を揺らしながら三味線を弾く姿が気味が悪いと、妹は涙を流し始めた」とか、こういうのを読むと、なんか外国の話を読んでるような気がして来る。アメリカ南部の黒人ブルースマンとか、けっこうこんなふうな悪霊に取り憑かれたような感じで歌ってたのかもな。子供が見てたら泣いちゃうくらいの迫力があったのかもな、とかアメリカ南部の風景が浮かぶ。そしてどんどん明治の頃の日本に興味がわいてくる。

 すごく感じのいい自転車屋の店長がいた、ということを先日書いたけど、その店長のお店のブログを見つけた。これ。このお店で自転車を買った人たちの写真がけっこう載せられてるんだけど、これを見ていると、ああ、俺もあのお店で自転車を買って写真を撮られたい! コメント付きでブログに載せられたい! と鼻息が荒くなる。

 自転車関係のブログをいろいろ見てたらこんな変わった電動自転車をみつけた。インドってすごいんだなあ!