昔の日記

部屋の整理をしていると20年ほど前の日記が出て来た。あの頃はまだインターネットなんてやってなかったから紙のノートにコツコツ日記を書いていたんだったなあ。1997年8月から9月にかけて19歳の僕はイギリス旅行に出かけている。僕が海外旅行をしたのはこの時の一回だけ。今日からしばらくの間このブログに21年前のイギリス旅行の日記を書き写して行ってみようと思う。日記の書き出しはトイレの個室の中から始まる。初めての外国にビビりまくっていた僕はロビーだのカフェだの、こじゃれた場所でノートを広げて日記を書く、なんてことが怖くてできない。人目につくところで何か書いているのを見つかったら、おい、そこの外国人、俺の国で何を勝手に書いているんだ、なんて怒鳴りつけられるんじゃないか、などと考え、誰にも見られないトイレの個室に飛び込み、ああ、俺にちゃんと英語をしゃべる能力さえあれば、空港の係員と交渉し、今すぐ日本に引き返す飛行機に乗せてくれ、とお願いするんだけどなあ、と、とにかく日本に逃げ帰りたい気持ちでいっぱいだった。空港からロンドン市内に向かうバスの中は前も後ろも青い目、金髪、白い肌、ばかりで、前の席のお姉さんの金髪を眺めながら、俺は本当に外国にきてしまったのだなあ、頼れる人が一人もいない外国でひとりぼっちなのだなあ、と死ぬほど心細かった。