ぼくのテレビ

 ぼくの部屋にテレビが来たのがおととしの夏だった。そのときに出演した欄干スタイルの演劇で使ったテレビを、その持ち主であり演出家であるしょうちゃんが、もういりませんから、ということで、演劇が終わった後でトラックに乗せてぼくのアパートまで運んでくれたのだった。
 このテレビで見た映像の中で一番印象に残っているものは、なんといっても北京オリンピックだな。トライアスロンのレースがおもしろかった。閉会式のジミー・ペイジがなつかしい。それからドラクエ5もやった。リサイクル・ショップでスーパーファミコンを買って来て、夜なべでドラクエをしたものだ。ドラクエの中で、どっかの家でご飯を食べているおじさんに話しかけると、「いやー、やっぱりうまいものを食うのが人生で一番ですな、ほかのことはつけたしみたいなもので」みたいなことを言ったのが、心に残っている。あとでそのおじさんが風呂場の樽の前にいるときに話しかけると、「ぐびぐびぐび、ぷはー。風呂あがりの一杯はたまりませんね、人生のほかのことは、まあ、つけたしみたいなもので」みたいなことを言っていたっけか。
 そういうわけで、このテレビのおかげで、ぼくはたいへん楽しい思いをしてきたのだけれども、このごろはなんだか全然テレビの電源をつけないようになってしまっていた。ぼくは11月から放映していたサッカーくじのCFに出ていたんだけど(パソコンの前で「あたった!」と言っている)、自分が映っているCFを見るのは恥ずかしいなと思い、テレビに布切れをかぶせていて、CFの放映の期間が終わるまでテレビをつけないでいようと思っていた。テレビを見なくても別に困らないなと思った。もう、テレビを売り払ってしまってもいいかもしれない、などと思っていた。
 というのも、テレビを持っているといろいろと気苦労がたえなくて、たとえばテレビを持っていると、NHKの人がお金をとりにきたときにお金を払わなくちゃいけない、という問題があって、それが最近では怖くて、いつ集金がくるかと思うと、部屋にいても全然のんびりできない。
 それに地デ鹿になるとこのテレビが使えなくなるという問題もあって、そうすると2010年にはテレビをゴミ屋さんに持ってってもらわないといけないなとか思い、このごろはテレビの処分代も馬鹿にならないという噂も聴いていたので、それが怖くなって来てもいた。
 そんなときに、職場の人がテレビを手に入れるために苦労をしているのだという話を聞いて、だったらぼくのテレビを使ってくださいという話になり、ぼくのテレビはこないだの日曜日に職場の人の家に貰われて行ったのだった。
 さようなら、ぼくのテレビ。ありがとう、ぼくのテレビ。新しい家でうんと活躍してくれればと思う。がんばってください。
 スーパーファミコンが欲しいとか、ドラクエ6が欲しいとかいう人はぼくに言ってください。ぼくはもう使わないので、お譲りします。というか浅井君、ドラクエ6はきみにあげよう。今度会うときを楽しみに待っていてください。

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 来週くらいにインターネットをやめるので、mixiyoutubeももうやめた。