ああ、私は今からペニスを切りに行こう

仕事では、ミスを連発し、怒られない日がないほど。思えば、保育園に通っていた頃からつまらない間違いをくりかえし、怒られ続けて来た気がする。たとえば、郵便局で、母が目を離したすきに、自動車の中にキーを置いたまま、ドアをロックして外に出てしまったり(あれはすでに小学校に通っていた頃だったか。僕と母はタクシーに乗り、スペア・キーをとりに家まで往復したのだった)。「明日は音楽の時間に自作楽器で遊ぶので、何か楽器を作って持って来る、というのが今日の宿題です」と言われたのをすっかり忘れていて、翌日登校途中に同級生が自作楽器を持っているのをみて宿題を思い出し、空き缶や石などを広いながら、自作楽器を作りながら登校したり。修学旅行の翌日は疲れがたまっているので登校時間を一時間おそくします、という連絡を聞き間違え、なぜか一時間早く登校してしまい、同級生が誰もいないのでまた家に帰り、結局その日の朝は学校まで一往復半歩いたり。ああ、思えば私の人生は間違いの連続だった。そして今でも、刻々と間違いを犯し続けている。大学図書館で間違いを犯し、文学部研究室からものすごい勢いで怒られたりし続けている。きっと死ぬまでなおらない。
まあ、それはともかく。ノーバディーズのライブで犬島に行ってから、もう一年がたつのか。犬島で会った人たちには、「こんな生き方もあるのだ、人生はもっと多様に広がりのあるはずのものなのだ」ということを教えられたのだった。犬島で感じた、「こんな生き方もあるのか」「こんな風に生きている人もいるのか」、そんな驚きや喜びは、ずっと忘れずにいたいものだと思う。それを忘れずにいれば、怒られてばかりの世の中も、なんとか渡っていけそうな気がする。

今朝みた夢は、小学校の同級生の男(リリー・フランキー似)と結婚する夢だった。僕は、実は内面は女子だったのだ、ということにはたと気づき、それでその男子(というかおっさん)と結婚をすることに決め、ペニスを切りに医者に行こうとしているのだけれども、なんとなく踏ん切りが着かずにもやもやしている、という息苦しい夢。後悔、あせり、ためらい、不信、絶望、いろんなものがごちゃまぜになった、たいへん不快な夢。ふと目をさまし、同じ部屋で眠る妻をみて、ほっと安心した。
去年の11月ごろ、この家に引っ越してきたばかりのころ、そのころはまだ妻は実家ぐらしだったから、僕はここでひとりで生活していたのだけれど、夜の十時過ぎに仕事から帰って来ると、NHKの『ラジオ深夜便』を聞くのが楽しみだった。そのときラジオから流れていた「深夜便の歌」が忘れられない。「明日の朝、神様がいらっしゃるよ」という歌。寒い冬の夜に、一人で夜食の用意などしながらAMラジオから流れる「明日の朝、神様がいらっしゃるよ」を聴く時間というのは、結婚以前の、一人だけで過ごす時間を象徴するような、しんとしみいるように静かな、茫洋とした、一人だけの時間だった。ような気がする。