音楽で稼いだお金は音楽に使いましょう

 こないだの日曜日、チョキチョキでおこなったライブに来てくれたお客さんは8人くらいで、入場料1000円で缶ビールと柿のタネをおまけに付けたのだけれども、その経費を3000円ほど抜いてみても5000円くらいは黒字になった。なんだか演劇とはえらい違いだな。演劇の公演をするのでは、お客さんが100人とか来てくれても、黒字になることなんてないんだけどもな。
 僕はライブの会場で「明日にでも北大路ビブレに行って、今日みなさんからいただいたお金でギターの弦を買います」と宣言したのだったけれど、結局はアマゾンでCDを5000円分注文して、黒字のお金を全部使ってしまったのだった。注文したのはルー・リードとたま。マーケット・プレイスで、ルー・リードなんて下手をすると70円とかで売ってるので、5000円で五枚くらい買えた。
 あなたのバンドは「たま」に似ている、と言われることがしばしばあったのだけれども、僕はたまの曲をあまり聴いたことがなくて(「さよなら人類」くらいはテレビで聴いてたけど)、たまがどんなコードチェンジで曲を作っているのか、どんな歌詞を書いているのか、それを勉強しよう勉強しようと思いつつ、日々の雑事にまぎれつつ、明日できることは明日するというのが僕の主義でもあるので、ついとそれをせずに今に至ってしまっていて、だから今度こそ本格的に勉強をしようじゃないかと、たまのメジャー・デビュー前の音源を集めたというCDを注文した。
 ライブを聴きに来てくれた寺田君という人と少し話をした。寺田君と会うのは2回目。初めて会ったのは9月のチョキチョキでの飲み会のときだった。寺田君のやっているというYoji & His Ghost Band | Listen and Stream Free Music, Albums, New Releases, Photos, Videosを聴いてみたけれど、すげえちゃんとしてるんでたまげた。いろんな音が入っている。あの音はスティール・パンだろうか。あの音はマリンバだろうか。あの音は逆回転だろうか。リズムなんかも一曲の中でころころ変わったりしておもしろい。おもしろいというか、聴いてて楽しくなる。僕なんかはどうやって作るのかぜんぜん分からないラテンっぽい曲もあったりとか。声もいい。高い声がちゃんと出るのがいい。低い声でけだるい雰囲気で歌うとこがあったりするのもいい。なんか変な声を出すのもいい。「ギュー!」とかいうのもいい。きっといろんな音楽を聴いて勉強をしているんだろうな。とその勉強熱心さと勉強にかけたであろう膨大な時間なんかを想像してそら恐ろしくなったり。だいたいこういう曲って、一曲作るのにどんだけ時間がかかるものなのだろうか。きっと相当な時間がかかっていると思うのだけれども。
 ライブの後でしゃべったことを思い返してみても、「あの曲でコードがこう変わるのが…」とか「あの歌詞はどこかへ行きたいというよりもその場所でただよっている感じの…」とか、ことばの端々から勉強熱心な印象を受けた。なんか勉強熱心と書くと、ねじり鉢巻に牛乳瓶の底の眼鏡をかけて、夜中に机に向かってガリガリと勉強をしている人、というイメージが浮かんでしまうのだけれども、寺田君はそういうのじゃなくて、ふだんから音楽や言葉についていろいろ考えている人じゃないと出て来ないような言葉が、彼からは自然に出て来るというような、そんな感じ。

 夏にはほとんど咲かなかったグリーン・カーテンの朝顔が今ごろになって次々に咲き出した。