江頭の会社法


 四月から通っている新しい職場は法科大学院の図書室的なところで、僕はこれまであまり法律関係の仕事をしてこなかったので、「民事判例集はどこに?」とか「別冊法学セミナーの増刊号のなんとかかんとかが、どうしたこうした?」とか、そんなことを利用者に訊かれたりすると、精一杯の愛想笑いをえへらえへらと浮かべながらコンピュータのキーボードを叩いて資料を探すふりをしてみたり、あたらしく同僚になった人に助けてもらったり。
 「大丈夫かしら、俺はこの職場でやっていけるのかしら」と少し不安にもなるけど、そんな不安も長く続かない。というのは、通勤路の鴨川土手に桜が満開で、桜の匂いのするぼんやりと暖かい空気の中を歩いていると、気分が無性に軽くなるからで、この春の空気をすっていれば「まあ、なんとかなるか」とどうしても楽観的な気分になる。
 こないだ東京に観光をしに行ってから、どうも東京の地理に興味がでてきたようで、日曜日に恵文社まで散歩したおりに

アースダイバー

アースダイバー

この本を買って来た。実際に東京に行く機会はもう年に一度あればいい方だ、くらいなので、僕は自分で歩き回ることのない東京の地理の本を読んで、自分の頭の中にバーチャルの東京を想像して、その中を歩き回ってみる、という新しい遊びをこれからは少しずつしてこう。
 なにしろ通勤が自転車から電車に変わったので、電車の中でけっこう本が読める。
 三月いっぱいで前の職場の人たちと別れる、というときはけっこう感傷的な気分になりそうになったりしたし、四月になってからも、前の職場のめちゃくちゃ広い書庫を懐かしく思ったり(雑誌のバックナンバーが読み放題だった!)もしたのだけど、新しい職場に通い出せば覚えることが多くて、どうやらそれどころじゃない。「江頭の会社法」とか、これから覚えることがいっぱいだ。
 しかし「江頭」と言われるとまず頭に浮かぶのが、黒いタイツに上半身はだかの江頭2:50で、江頭は僕の頭の中で三点倒立しようとがんばっている。