noise-poitrine2012-09-02

 ああ! もしも地獄兄弟になれたなら! 地獄兄弟の私はさっそうとそこに登場し、しかしあっという間におちぶれて、料理をするのが史上最強にうまいにもかかわらずカップラーメンを食べることになるだろう。兄は塩のラーメンを、弟は味噌のラーメンを。しかしいくらカップラーメンを食べていても、料理が史上最強にうまい地獄兄弟なのだから、もし仮面ライダーと対決することになったならば、地獄兄弟の私は料理対決をするに決まっている。ぱっとしないさびれた商店街の小さな豆腐屋に行き、一方は麻婆豆腐、もう一方は中華風冷や奴を作り、どちらがうまいか勝負する。勝った方だけが豆腐を買うことを許される。ということは、対決に使う豆腐は買った豆腐ではないということだ。売り物の豆腐で対決をするとは何とも贅沢な話だが文句を言う者は誰もいない。なんといっても地獄兄弟と仮面ライダーの対決なのだから。
 仮面ライダーと対決するほどなのだから、地獄兄弟は当然グリーのカードゲームにだってなっているはずだ。弟のカードは時間さえかければ手に入るが、兄のカードはなかなか手に入らない。兄のカードを探し求めて日本中の、いや、世界中の地獄兄弟ファンと通信をする。ああ! グリーのゲームで知り合ったどこかの高校生と、地獄兄弟のセリフをつぶやき合いたい。
「地獄で会おうぜ」と高校生がつぶやけば間髪を置かずに、
「最低こそ最高さ」と私がつぶやき返す。
 そのとき高校生の手には塩の、私の手には味噌のカップラーメンが握られているに違いないのだ。