noise-poitrine2012-09-05

 録画していたロンドン・オリンピックの閉会式を、9月になってようやく見た。テレビの前に妻と二人で膝を抱えて座りながら、僕は4年前の北京オリンピックの閉会式を思い出す。
 僕はエアコンも扇風機もない岡本アパートで、汗をかきながら北京オリンピックの閉会式をひとりで見ていた。閉会式の終わり近く、赤い2階建てバスが競技場に入って来て、「ああ、次はロンドンですね」なんてNHKのアナウンサーが言っている。バスからは長い白髪を頭の後ろで束ねたおじさんが出て来て、よく見るとそれはノッポさんで、ノッポさんはギターを持っている。「あ、ノッポさん、ギター弾けるのかな」と思ってよく見ると、その人はノッポさんではなくジミー・ペイジだった。ジミー・ペイジはバスの上で「胸いっぱいの愛を」の演奏を初めて、解説をしていたNHKのアナウンサーは「ボルテージがあがって来ました!」と嬉しそうに言ったのだった。それで僕もボルテージを上げてテレビにかじりついていた、というのが昨日のことのようだが、それももう4年前だ。

 ロンドン・オリンピックの閉会式にはリオデジャネイロの道路掃除のおじさんが登場し、ダンスを踊っていた。4年後にオリンピックの開会式とかでサンバとかが踊られるのを見たとき、僕は4年前のロンドン・オリンピックで踊っていたあのおじさんのことを思い出していることだろうなと、そんなことを考えつつ体育座りをしていると、自分が4年後のテレビの前に座っているような気がして来る。リオデジャネイロ・オリンピックの閉会式を見ながら、ロンドン・オリンピックの閉会式を思い出しているような気になってくる。それでちょっと部屋の中を見回してみると、ああ、ロンドン・オリンピックの頃はこの家に住んでいたんだよなと、あのときはまだ僕も僕の隣でテレビをみる妻も、今より4歳若かったんだよなと、今みている景色が懐かしくて懐かしくて呆然としてしまう。