もじゃ子「こうやってさ、お皿洗ったりしてるとさ、このお皿をこうに、こすったりとかさ、してると、これって民芸博物館行ったときに買ったんだけどさ、ちょっとそのときのこと思い出したりしてさ、買ったときの、秋のあったかい日だったなーとか、そういうのとか、思い出したり、今日の料理はこのお皿でよかったのかなとか、あっちのお皿の方が色が合ってたかなとか反省したりとかさ、そしたら次はどんな料理のせたら、これに合うかなとか考えたりとかさ、お皿も、これ素材っていうか、何でつくられてるかとかで手触りとか違ったりしてさ、あ、このお皿のヒトはツルツルのヒトだとか、こっちのヒトはザラザラのヒトだ、とか、ふきんで拭くときとかも手応えが違ったりしてさ、厚みとか硬さとかも違うから、それを一個いっこ拭いてって、今日もお勤めご苦労様です、みたいな感じで拭いてって、そんで最後ちゃんとそろえて食器棚に並べるのとか、けっこう私、お皿洗うの好きかもしんないんだいね。お皿つくった人のことまで考えたりとかしてさ、これつくった人は、このザラザラ感が好きだったんだろうなーとか、このちょうどいい重さが、なんかこう、すごい良かったんだろうなーとか、あとはもう死んじゃったけど昔に生きてた人、私のおばあちゃんとかおばあちゃんのおばあちゃんとか、そういう人もこうやってお皿洗ってたんだろうなーとか思って、縄文土器とかも、縄文の人が川とかでじゃぶじゃぶ洗ってたんだろうなーとか、そういうさ、昔からずっと、お皿を洗うっていうのがずっと続いて来ててさ、だからさ、私もいつかおばあちゃんになって死んじゃうわけじゃない? でも、私が死んじゃっても、お皿洗いは死なないでずっと続いて行くんだよなーとか思ったり、もうだから、この、こうに手を動かして、お皿をこうになでたり、こすったり、拭いたりとか、これはずっと死なないんだなーとか思うとさ、なんか私が死んじゃっていなくなっちゃうことなんか、全然たいしたことじゃないなーとか、思うんだいねー。ずーっと昔から続いて来た流れっていうか、そういう死なないお皿洗いに、私はいまその流れの仲間に入れてもらってるみたいな、そういう時間が今あれば、それだけでもう、すごい私、お皿洗い好きかもしんない」