このままの調子で派遣で働きつつときどき戯曲を書いているだけでは将来食べて行けなくなるのではないか、年金なんてちょっとしかもらえないのだし、老後は大丈夫なのか、いやそれよりも来年はどうやって食べていくのか、そんな不安がいつも頭に浮かんでいて、それで就職に有利になるように何か資格でもとろうとTOEICを受験してみたりしたけど、しかしよしんばTOEICである程度の点をとったとしても、それでほんとに僕は就職できるのか、ネットで英語関係の仕事を検索してみても、子供英会話スクールとか、インドの国籍を取ってインドに住んで日本語のマニュアルを英語に翻訳する仕事とか、そんなのばっかしで、僕はインドに住みたいのだったか? と自問する日々だ。
 先のことなど考えてもしかたがない、いまやるべきことに集中していればいい、ということを考えなくもないけれど、しかし今やるべきことは何なのか。戯曲を書くことか? 英語の勉強をすることか? 正社員の仕事を探すことか? 何かをやらねばと猛烈に焦りながらも、何から初めれば良いのかと、結局コンピュータの前に座ってブログを書いてみたりしている。
 かつては、仕事は今ほど大変なものではなかったのだ、という話を母から聞いたことがある。職場にはプールがあり、残業なんてないから仕事が終わればプールで泳ぐ。あるいは別の人から聞いた話では、職場に床屋さんが入っていたなんてところもあったらしい。仕事はそれほど忙しくないのだから、みんな仕事中に髪の毛を切りに行く。男性はヒゲをそってもらいにいく。ひげ剃りには予約が必要なので、当番になった人が予約を取って回る。女性はパーマをかけてもらう。パーマなんてやろうと思えば一時間から一時間半は時間がかかる。仕事中にそれだけ誰かが抜けてもちっとも問題ない、それで毎月給料が出て、年に二回ボーナスも出る、そんなおおらかな時代がかつてあったというのだ。ああ、僕もそんな職場で働いてみたい。職場の床屋さんで月に二度散髪をしてもらいたい。五時になったら更衣室にかけこみ、水泳パンツに着替えてプールにとびこみたい。会社のワンゲル部に所属して、週末ともなれば同僚たちと山に登り、頂上で肩を組み歌を歌う。