こないだの金曜日、「こんにちは美術 Live」という公開講座を聞きに京都造形大学に行ってきた。福永信いとうせいこう浅田彰の三人が、福永さんが今年出した本「こんにちは美術」をサカナに話をするという講座で、この講座の最後に3人が持ち寄った映像を見せあう、というのがあって、これにものすごい刺激を受けた。
 僕は一年半くらい前から、もうネットとかで情報を集めてまわるのは極力やらないように生活してみよう、みたいなキャンペーンをひとりでしていて、それでツイッターとかもやめちゃってたんだけど、そうしてうつむくようにして世の中から目をそらして生活しているうちに、情報ばかりでなく、文化や芸術とかからも目を背けがちな生活になっていたことだなあ、と反省した。今回の公開講座も妻が情報を仕入れて来てそれで二人で聞きにいったのだった。
 世の中にはおもしろいものがいっぱいあるんだなあと、3時間近く感心しっぱなし。せっかく生きてるんだから、文化や芸術をもっともっと享受して生きなくちゃもったいないや。というわけで、これからはネットで情報を取り入れることとかも積極的にがんばって取り組んで行きたい。twitterもまたはじめてみた。

 さて、金曜日に三人が造形大学の教室で見せてくれた映像を、自分のメモの目的もあるんだけど、ここにyoutubeのリンクつきで記録しておきたい。

クラフトワーク
「Radioactivity」

 僕はテクノをほとんど聞いたことがなかったんだけど、クラフトワークってかっこいいんだな。自分の知っている音楽しか聞かないという僕のこれまでの保守的な生き方を反省した。

会田誠
「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ」

youtubeのリンクで見ると映像が動かないんだけど、金曜日に造形大学でみたビン・ラディンと名乗る男はちゃんと動いて、炬燵で日本酒を飲んでいた。これのすごいところは英語の字幕がついているところで、それはつまりテロリストがこれを見たら会田誠を殺しにくる可能性があって、命をかけてくだらないことをしているというところ、だという話を聞いてなるほどすげえなと思った。そうやって殺されてもいいぞ、ぐらいの覚悟でものをつくっている人に「日本は、ぬるま湯ですね」みたいなことを言われると自分のぬるさを思ってドキッとする。

Michel Gondryのミュージッククリップ

「こんなのどうやってとってるんだ!」といとうせいこうは興奮しながら紹介していた。「ふうん。まあ、なかなかやるね」と上から目線で作品を見るのではなく、「これはすごい!」と興奮しつついろんなものを見られる大人に僕もなりたい。

ブンミおじさんの森

「緩慢なフィルムの速度の快楽」というようなことをいとうさんは言っていた。ああ、そういう風に映像は見るものなのだな。見るというよりも味わうという感じか。映画の冒頭、薄暗い田んぼの中を黒い牛が逃げて行く場面を見たあとで、いとうさんは「なにがなんだかわけがわかんない。これは死んだ後のことなのかとか、ブワーッと考えちゃう」と言っていたけど、芸術作品っていうのはそうやって人にブワーッといろんなことを考えさせるものなのだろうな。ただ情報を伝達するものではなく、それに触れている時間にいろんなことを考えさせるような。ああ、僕はぼーっと生きていないで、ブワーッといろいろ考えて生きなくちゃだめだ。

「Mon Onkle」

群馬の高校生だった僕は、20年くらい前にテレビでやってたこの映画を見たんだけど、ちっとも良さが分からなかった。いとうさんは「何度みてもおしゃれ」「一番おしゃれ」な映画だと連呼していて、ああ、これをおしゃれと感じられる感性が僕にあれば、もっと人生は違ったものになっていただろうなと田舎の高校に通っていた自分を振り返るようだ。高校生の僕はきっと映画のストーリー、筋、起承転結、みたいなことしか見られていなかったのだろうな。この映画のおしゃれな音楽は、小西康陽とかの日本のおしゃれ系音楽に影響をあたえていて、とかいう話も出て、ひとつの映画からどんだけ話が広がるのか、といとうさんの楽しそうな口ぶりに圧倒される。

サシャ・バロン・コーエンの「ブルーノ」

いま、アメリカのコメディアンが命がけですごいことをやっているのだそうだ。僕はそんなのちっとも知らなかった。いとうさんは泣きながら、口をあんぐり開けながらアメリカのコメディアンの作品を見ているんだとか。

 こうやって、自分の好きな映像、自分が人に見せたいと思う映像を持ち寄って友達と一緒に観る会、みたいなのをやったらおもしろいだろうな、と考えたときにふと思い出したのが、何年か前に友達とレンタルDVDを見たときのことで、あのときは何人かで酒を飲みながら「ドッグヴィル」とか「ピンクフラミンゴ」とか「書を捨てよ街へ出よう」とか、一晩で4本くらい映画を見ようとしたのだった。ああいうのをまたやりたいな。