良い借家

 夢。とても良い借家を借りることになった。静かな環境、充分な部屋数、広い居間。特に気にいったのは障子から柔らかい外光の入る畳の部屋。古い箪笥が置いてある。この部屋は書斎に使おうか、それとも寝室にしようか、などと考えてワクワクしている。しかしこの借家にも問題点がある。居間が銭湯に隣接しているのだ。町じゅうの人たちが私の家の居間をとおって銭湯に入る。というか、良く見ると居間が脱衣所になっているようだ。今日は全裸のおじさんが濡れたからだでテーブルの上に足を組んで座っている。
 2、3日会わないうちに娘が小学生になっていた。小学生の娘との再会は法学部の教室で行われる。私が教室に入って行くと妻は一番前の席で講義を聞いているところだった。2、3人の小学生が教室の後ろの方で騒ぎはじめる。すると妻がその小学生に我々の娘の名前を呼びかけ、講義中だから静かにするようにと注意する。新生児の頃の2、3週間を一緒に過ごしただけの私なのに、娘はこの私を自分の父親であるとすぐに認識し、「お父さん」と私に呼びかけて来た。その顔をみればたしかに新生児の頃の娘の面影が残っている。それにしても私は子育ての一番良い時期を経験せずに飛び越えてしまった。なんともったいないことをしてしまったのか。