ルーおじさん、祖母に電話

 最近娘はルー・リードが気に入っている(ような気がする)。
 娘よ、ルーおじさんはもう死んでしまったんだよ。ええ! 本当ですか、お父さん。娘よ、ルーおじさんが新しい歌を書くことはもう二度とないのだよ。えー、お父さん、それでは私は困ります。それじゃあお父さんがルーおじさんの作った歌を聴かせてあげよう。それで私がギターを引っぱり出してルー・リードの歌を歌って聴かせると娘は泣き出してしまうのだった。泣いている娘を見ていると、ああルーおじさんはもうこの世にいないのだな、ルーさんが歌を歌うことは二度とないのだなと、私もしんみりしてくる。しかし娘よ、あなたはルーおじさんと同じ時代を、2ヶ月だけだけど生きたんだ、それだけでも良かったじゃないか。

 群馬でひとり暮らしをする祖母に電話をする。11月1日が祖母の誕生日だったのでおめでとうを言おうと思って。おばあちゃん、いくつになったんだっけ? 90歳と8ヶ月だよ。え? だってこないだ誕生日だったんでしょう? そうだよ、11月1日だったんだよ。じゃあ、8ヶ月って何よ? という会話をして、おばあちゃん大丈夫なのかしら、とちょっと心配になる。僕の妻の名前も僕の娘の名前も出て来ないみたい。娘の名前はこないだ送った手紙に書いたんだがな。覚えやすい名前なんだがな。とまた心配になる。

 モローさんはもうすっかり来なくなってしまった。どこかよその家に行かはったんやね。