妻の妊婦友達だったエリちゃんが２週間ほど前に出産をすませたので妻とエリちゃんは今ではいわゆるママ友になっているのだった。今日、妻が娘をつれてエリちゃんの家に遊びに行くと、エリちゃんの家の赤ちゃんはすごくちっちゃい。体重は我が家の娘の半分だというけれど、でも見た感じは半分よりもっともっとちっちゃいし抱けば軽い。手を胸の前でもにゃもにゃ動かしているのを見たり、動物っぽい声でミャーミャーいっているのを聞いていると、妻は娘が生まれたばかりの頃を思い出すようだ。たった３ヶ月なのに娘はずいぶん大きくなったものだ。という話を家に帰って妻から聞いたのだけど、私はもう娘がどんな風にもにゃもにゃと手を動かしていたのか、どんなふうにミャーミャーいっていたのかがうまく思い出せない。娘が生後１週間だった頃、私はこのときの娘をちゃんと覚えておこう（娘はすぐに大きくなっちゃうのだから）、と思っていたはずなのに、いまとなっては「そんな時期もあったような……」とぼんやりとしか思い出せない。でもたぶん、私も新生児を見れば、ああ、僕の娘もこんなにちっちゃかったころがあったんだ、と思い出すはずで、外を歩いているときにおばちゃんとすれ違えばその全員がベビーカーをのぞき込んで「かわいいね」とか「よう寝てはる」とか声をかけてくれるのは、あれはきっとおばちゃんたちは自分の子供が赤ちゃんだった頃を思い出しているのにちがいない。
