1歳の誕生日のことなど

 9月6日。
 このごろ雨が降る日が多い。昨日も雨、今日も昼頃から雨。雨の中、妻と私と娘とで、妻の弟の車に乗せてもらい、私の弟の家に行く。弟にふたりめの子供が生まれることになったため、弟から借りていた赤ちゃん用品を返しに行くのが目的。車の中で仮面ライダーの話などする。平成に入ってからの仮面ライダーは、ひとつの話に大勢の仮面ライダーが出て来る、というのが主流になっており、ある年の仮面ライダーには13人の仮面ライダーが登場したのだったが、その13人のうちで誰が一番の仮面ライダーか、ということを決めるために殺しあいをする、13人の中にはお金儲けをする目的で仮面ライダーになっていた人がいたのだが、この人が遺産を相続してお金持ちになり、それ以上お金儲けをする必要がなくなったため仮面ライダーをやめようとするのだが、しかし途中で殺し合いから抜けることが許されず、結局その人は他の仮面ライダーに殺されてしまう、最終回のひとつ前の放送では主人公の仮面ライダーも殺されてしまい、最後は「2号ライダー」だけが生き残る、という陰惨な仮面ライダーなんだ、などという話を聞き、今の子供たちはそんな大変な仮面ライダーをみているのか、とさみしくなる。いま放送中の仮面ライダーではすでに主人公のライダーが死んでしまっているのだが、たぶん次回の放送(明日の朝か)で半分怪人になって生き返るのではないか、とのこと。いま放送中の仮面ライダーが終われば、次からは仮面ライダーではなく、仮面ドライバーの放送が始まるらしい。
 弟の家には弟の奥さんのともちゃんと弟の息子のこうちゃんが二人で暮らしている。弟はもう何年も前から関東に単身赴任をしていて、不在。弟の家で弟と会ったのは何年前のことだろう。弟は長野県かどこかの珍しいビールをたくさん冷蔵庫に持っていて、それを次から次へとあけては空にしていったことを思い出す。あの頃は甥のこうちゃんもまだ小さかったが、いまでは五歳になっており、プラスチックの剣を四本も持っており、その剣を使って私とチャンバラごっこをする。こうちゃんは私にビニール風船の剣しか貸してくれず、そのため私は不利な戦いをしいられ、腕や尻などをさんざん攻撃される。こうちゃんに剣で突かれながら、ふと仮面ライダーにやられる怪人の気持ちを想像した。

 9月5日。
 バンドの練習。練習前、早めにスタジオに来ていたキャプテンから、キャプテンの娘さんがこのごろ寝返りをうつようになった、という話を聞く。仰向けからうつ伏せに寝返ったはいいけれど、そのまま戻ることができずに泣いてしまう、仰向けに返してあげても、すぐにまたうつ伏せに寝返ってしまうんだ、という話を聞いて、「ああ、うちの娘もそんなことがあったっけ」と答えようとするが、しかし娘が寝返りをうつ映像がうまく頭に浮かばず、愕然とする。娘がはじめて寝返りをうったのはいつだったのか。喜ばしいことだったはずなのに、そのときのことを何も覚えていない、というのはどういうことなのか。どんどん忘れてしまう。

 9月2日。
 娘が歩く。と言っても2歩か3歩だけで、ゆっくりと2歩か3歩あるいて、それからしゃがんでしまい、それ以上は歩かない。まだまだ移動するにはもっぱらハイハイ、あるいはテーブルなどにつかまってのつたい歩き。

 8月31日。
 yoji & his ghost bandのCDに使う写真の撮影。CDは10月くらいから全国のレコード店に並ぶことになるらしい。教会の庭での撮影だったのだが、ミサが始まる前に撮影を終わらせるために朝7時半に集合。写真を撮り終わったあとは全員でなか卯に行き朝食を食べ、コンビニでコーヒーを買って御所に行った。特になにかするわけでもなく、ただ寝転がって空をみて時間を過ごす。これほどゆったりと時間を過ごしたのは何ヶ月ぶりだろう、と思う。と同時に、今ごろ家では妻が娘に離乳食を食べさせたり、娘をおんぶしながら家事をしたりしているのだな、と、家族のうちで自分だけがぬけがけをしているようで、落ちつかない気もする。こんど近いうちに家族三人で御所に来て、何もせずにぼーっとすることをしたいな、と考える。キャプテンが「あー、……あ。……ぶー」と、自分の娘のものまねをする。お昼頃に解散し、僕は演劇をみてからJ子ちゃんの個展へ。「J子ちゃんはマンガを描いたらいいんじゃないか」などと思いついたことを口に出す。

 8月30日。


 娘の誕生日を祝う集まりを家で。妻のお母さんが一升餅とお赤飯を持って来てくれる。私は知らなかったのだが、一歳の誕生日には「選びとり」という占いをすることになっているらしい。妻がインターネットで調べたところによると、筆、そろばん、お金、の三つを子供の前に置いて、どれを選ぶかでその子の将来を占うものであるらしい。占いに使うアイテムはそれぞれの家庭で好きなものに変えてもいいそうなので、我が家ではペン、電卓、糸、カスタネット、の四つを使い、娘はカスタネットを選んだ。妻のお婆ちゃんが折り紙でつくった首輪や花を、妻の弟はおもちゃのティーセットをプレゼントしてくれる。娘は木製のこのティーセットをよろこび、大人たちとお茶をつぎあったりお茶を飲んだりするフリをして遊ぶ。娘はしばらく前から大人のまねをするようになっていて、大人が小さな木のカップでお茶を飲むふりをすると、娘もまねをしてティーポットからお茶を飲むふりをする。それがジョッキで生ビールを飲む人のように見えて、大人たちは「将来は飲み助かな」などとおもしろがる。そして一升餅をふろしきに包んで娘に背負わせる、という儀式。

 餅を背負ったまま娘はテーブルにつかまって立つ。けっこう平気な顔をしているので、大人たちは感心して、強い子だ、と娘を褒める。やがて娘は尻餅をついて泣き出すのだが、娘の両親はその姿を写真に撮るのとビデオに撮るのに夢中で、娘はしばらく放っておかれる。見かねた妻のお母さんが娘の背中からお餅を降ろしてあげる。この日に撮影したビデオは、カメラからコンピュータにデータを移している途中で「iPhotoは予期しない理由で終了しました」とメッセージが出て、データがどこかに消えてしまった。写真は無事だったのだが。大人たちはケーキ店で買って来たバースデーケーキを食べる。卵アレルギーの娘はケーキを食べられないので、妻が食パン(スポンジケーキのかわり)とヨーグルト(生クリームのかわり)に桃をトッピングしてバースデーケーキを作る。あなたの誕生日はイチゴのない季節なのだね、と妻がちょっとさみしそう。

 8月28日。
 娘の誕生日。1年前はこんなにちいさかった娘なのに。赤ちゃんは1年間でこれほど成長するものなのか。この日は近所の中華料理店のワンワンを予約して中華料理を食べに行った。娘の誕生日を祝う会は土曜日にするため、今日は我々両親の、0歳児の育児が終わったことの打ち上げ。壁に貼られたメニューを、「冷麺、950円」などと読み上げると娘はそれがおかしいらしく、ケラケラと笑った。たらふく食べたところで最後のしめにラーメンでも、と注文したひき肉と唐辛子のラーメンがとても辛く、大汗をかいた。
 1歳になる娘は携帯電話を首の後ろにあてて「あ、あ」と電話をかけるふりをする。舌を口から素早く出し入れして「kath kath kath」という言葉(?)を早口でしゃべる。

 9月7日。
 nanoでライブ。来てください。