カンの虫

 昨日の夜、晩ごはんを食べたあとあたりから、急に娘の機嫌が悪くなる。もう、いままでに見たことがないくらいの機嫌の悪さで、ままごとに使うティーポットのフタとかを僕に向かって放り投げる。あらら、いけませんよ、と拾って手渡してあげると、それをまた泣きながら投げて来る。急にどうしちゃったのか。録画しておいた『ごめんね青春!』を見ながら晩ご飯を食べてたんだけど、あのドラマのコロコロと展開していくスピードとか情報量の多さとかで脳みそが誤作動をおこしてしまったのか? 風呂に入れば、風呂の中では機嫌がなおっていて、ジュンコチャンにもらったプラスチックのカップのおもちゃで遊んだりもするのだけど、風呂から出るとまた機嫌が悪くなり、ふとんに寝かせようとしても泣いてばかりいてちっとも寝ない。しかたがないので妻がだっこひもでだっこしてやっと寝かせる。が、夜中に突然両手を天井に差し伸べて泣きながら眼を覚ます、というのを何度か繰り返し、そのたびに妻がだっこをしてあげるのだけど、しかしなかなか寝ない。怖い夢でも見ているのだろうか。お湯を沸かしてミルクをつくり、哺乳瓶で飲ませるところっと眠る(母乳はこないだ卒業したのだった)。
 今日、妻がインターネットで調べると、突発性発疹の後では2、3日機嫌が悪くなる子がいるらしい、ということが分かった。あせもみたいな、じんましんみたいなぽつぽつが娘の背中一面に出ていたけど、あれが突発性発疹だったのかしら。今日の夜はすこし機嫌がなおっていて、それでもやっぱりぐずぐずと泣いたり物を投げたりしないことはないので、わりとずっと妻がだっこしていて、だっこしながらUAの『ドレミのテレビ』のMDを聴いていた。「森のくまさん」の歌詞がどうしても僕は気にかかる。小さいときから30年くらいずっと気になり続けているのだが、「お嬢さん、お逃げなさい」というくまさんは何から逃げろと言っているのか。熊である自分がお嬢さんを襲う危険があるから逃げてくれ、と言っているのか。危険な熊だったらそもそも逃げろなんて言う前にお嬢さんを食べちゃうだろうし、そうじゃなくて親切な熊だったらお嬢さんを襲う危険もないんだからやっぱり逃げろなんて言わないだろう。二重人格の熊なのか。いまこの瞬間は親切だけど、次の瞬間は人を襲いたくなる自分を抑えきれないかもしれない、ということなのか。動物なんて所詮そんなものだ、いつなんどき自分の衝動をおさえられなくなり人に襲いかかってくるかもしれない、という歌なのか。外国の歌を日本語に翻訳したときに言葉が足りなくて変な歌詞になっちゃった、ということもあるかもしれないぞ、と30年間繰り返してきたおなじみの謎をぐるぐると考える。やはり今回も結論は出ない。