演劇を観に行った

 こないだの土曜日に、東京まで演劇を観に行って来た。甘もの会が、僕の書いた「わたし今めまいしたわ」という戯曲を上演してくれるので、それを観に。そんでもって、終演後に磯崎憲一郎さんとアフタートークをしたのだった。アフタートークでは僕は一生懸命にジャック・ブルースを好きな理由を並べていたのだけれど、胸に手をあててよく考えてみると、はて、僕は本当にジャック・ブルースのことが好きなのかしら? 学生のころはクリームが好きで良く聴いていたけど、でも、クリームはクラプトンとジンジャー・ベイカーがいるからあの音になってるわけで、そうするとジャック・ブルースだけが特に好きと言うわけじゃなくて、僕はクリームの三人の出す音が好きなのか? ジャック・ブルースのあのうるさいベースも、何度も聴いて耳コピする、というほどでもなかったし。もしかしたら僕はジャック・ブルースが好きだと思い込んでいただけなのか? こないだ買った『シルバー・レイルズ』もあんまりたくさんは聴いていないし。
 僕がアフタトークで「この曲が好きなんです」と言ってたクリームの曲はこの曲でした。最初の5拍子のところが変なメロディーで好きなんだ。すげえ良い曲、というわけでもないんだけど、なんか好きなんだな。

 あれ? でも、なんで僕は演劇のアフタートークで一生懸命になってジャック・ブルースが好きだという自分の弁明、みたいなことをしゃべっていたのだっけか。ほかにどんな話をしたんだっけか?
 そうだ、ヒートテックの話をしたんだった。アフタートークで話題にのぼってたヒートテックに関する僕のブログはどんなのだったか? と思って自分で自分のブログを検索してみた。去年の2月の日記。http://d.hatena.ne.jp/noise-poitrine/20140228
 ほんとだ「ああ、結婚して良かった」とか僕は書いている。でも、ほんとそうだよな、結婚する前は冬がすごく寒かった。今では、ヒートテックだけじゃなくて、畳の上にしく暖かい敷物だとか、ガスのストーブだとかで、冬は本当に暖かく過ごせている。結婚して良かったと思う。

 妻と娘と三人で新宿について、昼の公演を妻が一人で観劇した。その間、僕と娘は二人だけで花園神社で階段を上ったり降りたりして遊んでいたんだけど、家から遠く離れた見知らぬ都会で、ふたりだけで一時間半くらいも遊んでいると、もう、僕は頼れるのは娘だけだ、みたいな気分になるし、たぶん娘も同じように感じていたんじゃないかな、この花園神社を堺にして、ぐっと娘との距離が縮まったような気がする。より親密な間柄になれたような気がする。
 その証拠に、アフタートークを聴きに来た娘は舞台でもじもじしている父親をみて、「とと大丈夫?」と終始心配をしていた。僕がなにかの罰ゲームでも受けているか、みんなの前でさらし者にされているか、そんな風にみえたのだろうな。そして、アフタートークが終わるとすぐさま立ち上がり、僕の方に歩いて来ながら、大きな声で「ととおいでー」と呼びかけてくれたのだった。僕は、お母さんの胸にとびこんで行くみたいな気持ちで娘の胸にとびこんで行った。僕はこの娘に守られている! という気がした。娘が僕を守ってくれるから、僕はどんなつらいことだって乗りこえられる! いや、アフタートークがつらかった、ということではなくて。アフタートークは楽しかったんだけど。

 「わたし今めまいしたわ」は、桃白白のところがカットされてたのが残念だったなあ。もう終わったことなんで、くよくよしたってはじまらないから、まあ、もういいんだけど。次にまたがんばってなんかおもしろいものを書こうっと。
 エプロンをつけた細身さんが突然やって来るところとか、ラケットを持った力武さんが海中を泳ぐ場面とか、やっぱし実際に眼の前にその人が出て来るとインパクトがあったなあ。僕は自分の頭の中で想像していただけなので。それに、僕はラケットを持った人がレンガのブロックを壊す、ということくらいしか想像していなかったんだけど、そうだよな、泳いだりすることもあるんだよな、と眼からうろこみたいな感じがした。あと、エプロン刑事のダンスがうますぎてびっくりした。
 もち肌シスターズは若かったな。キャピキャピ、キラキラ、まぶしかった。僕の想像ではちびまる子ちゃんの野口さんみたいな、じめじめした人を想像していたんだったけど、ぜんぜん逆だった。
 ふにゃふにゃしたビーチボールが飛んで来る、なんていうのはぜんぜん僕は予想していなかったので、お、そう来るか、とおもしろかった。
 星野さんは初めて演技をみたけど、どっしりとした安定感があってよかった。野津ちゃんの力の抜けた感じの演技と対照的という気がして、それは現実に存在している娘と、現実に存在していないコンピュータお母ちゃんとの対照的な感じ、みたいなのにつながっていたのかもしれない。でも、たとえば、逆に、現実に存在する娘よりもコンピュータお母ちゃんの方がなぜか逆に安定感がある、とかいう見せ方もあるかもしれないな、つまりキャストを逆にして上演するという手もあるのかもしれないなあ、などと、京都に帰って来て、仕事中とかにひとりで勝手なことを想像してみたり。

 その日は新宿のホテルに泊まって、僕はここで人生で初めてバスローブというものを着た。バスローブって、あんなにずっしりと重たいものだったのだな。バスローブを着て新宿の夜景を見おろしていると、ビューティフル・ピープルの一人にでもなったようなリッチな気分になって来るから不思議だ。
 翌日の朝食はバイキング形式の朝食で、僕ら三人はここで2時間くらいかけて心ゆくまでおいしい朝食をお腹につめこんだ。娘なんて、トマトをそれこそ山ほど食べていたし、リンゴジュースだって3杯くらい飲んだんじゃないかな。ニコニコとサービスをされながら、焼きたてのオムレツとか生ハムとかクロワッサンとかを食べていると、やっぱりビューティフル・ピープルの一人になった気がして、すーっと背筋が伸びるようだ。朝食をお腹いっぱい食べたので、この日は夜になるまでほとんど何も食べられなかった。
 朝食のあとで、群馬から上京してきた両親や東京に住む妹の一家と会って、新幹線で京都の家に戻り、家族三人でうどんを食べて寝た。