はとこに会う

 妻のいとこに赤ちゃんが生まれたので会いに行く。生まれてからまだひと月だというこの赤ちゃんが想像以上に小さかったのでたまげる。が、体重を聞くとうちの娘が生まれたばかりのころとあまり変わらない。うちの娘もこんなに小さかった頃があったんだ。赤ちゃんを抱かせてもらったら風船みたいに軽いのでたまげた。うちの娘もうまれたばかりの頃はこんなに軽かった、という記憶はあまりにかすかであやふやで、前世の記憶のようだ。
 いとこの家には娘よりもちょっとだけ先に生まれたお兄さんがいる。娘はお兄さんの持つ楽器(木琴やら打楽器やらがいろいろくっついたもの)が気になり、さわりたくてしかたがない。が、お兄さんは自分の持ち物を人に勝手にいじられたくない。お兄さんに「だめ!」と言われて娘はすこしむっとしたような顔でお兄さんに背を向けた。2、3秒はそのままむっとした顔をキープしていたが、ふと頬の筋肉が上に持ち上がり、「わーん」と泣いてしまった。びっくりしたから泣いた、というよりは、初めてお邪魔した家、アウェイの場所で、ほとんど初対面のお兄さん(実際は1、2度会ったことがあるが、おたがい赤ちゃんだったのであまり記憶に残っていない)に自分を否定された、ということが悲しかったのだろう。自分の家ではほとんど肯定しかされない。「それをやっちゃあいけないよ」と言われる場合でも、自分の存在を肯定しつつやってはやってはいけないことを注意される、それがここでは、このよそのお家では、自分はおもちゃを触ってもいい人とは認められず、頭から「だめ」と否定された。私が生まれて来たこの人生とは、実はこんなに理不尽な場所だったのか。という悲しみ。
 その後、お兄さんからドングリや赤い実をもらったりして、少しずつうちとける。