拾得にてベイチモのライブ

 拾得でベイチモのライブ。リハーサルの後、バンドのみんなで堀川に降りておやつを食べる。堀川には風が吹き、お父さんと子供たちが遊んでいた。俺の子供ももうすこし大きくなったらあんな風に石の上をぴょんぴょん飛んだりするんだろうなあ、楽しみだなあ、とじっと見てしまう。
 ライブをするとこんなにもはつらつと元気がでるものか、と思う。ふだんは工場と家との往復だけで、工場では「おはようございます」と「おつかれさまです」以外はほとんど口をひらかず、ひたすら機織りをする、という日々なので、自分がぜんぜん世の中とつながっていないような気分になるんだけど、こうやってライブハウスで人まえで歌をうたって拍手をもらったりすると「今日は世の中の人とつながりが持てたなあ、良かったなあ、また明日からがんばって生きられそうだよ」と充足感みたいなものを感じる。このバンドに入れてよかったなあ。長く続けられるようにしたい。がんばって作詞しようっと。

 ライブのあとでキャプテンやつんじらと一緒にラーメン屋へ。ここはねぎラーメンというのが有名らしい。夜の遅い時間(10時過ぎ)だというのにけっこう満席に近い。カウンター席では外国人のお客さんが紙のエプロンをつけて神妙にラーメンを待っている。どうもすごく火が出る感じのラーメンらしい。中国語のメニューでは、ねぎラーメンのことを「噴火拉麺」みたいなふうに書いてある。「さあ、いよいよだよ、気をつけてよ」みたいな感じで店の中がピリピリと緊張した空気になり、厨房の方を見るとおじさんがぼうぼうと火の燃え上がる鍋を持っている、カウンターごしに外国人のお客さんのどんぶりの中に火を注ぎ込む、すると今度はどんぶりがぼうぼうと燃え始める。テレビでみた溶鉱炉を思い出す。どんぶりの火は座っているお客さんの頭の上くらいまでも吹き上がっていた。お店の人がお客さんのスマホをあずかり、いかにも慣れたふうにラーメンを食べる外国人の写真を撮る。「ジャパニーズスタイル!」とか言ってお客さんの箸を鼻に持って行って、鼻でラーメンを食べようとする写真、とかをとっている。ちょっと強引な気がしたけど、こうやってラーメンを仲立ちにして外国人とコミュニケーションをとることで、ラーメン屋のおじさんは世の中とつながってる感をかんじて日々すごしているのだろうなあ。やっぱり世の中とつながってる感じっていうのは大事だよなあ、などと思う。
 終バスの時間まで、堀川で寺田君たちとぼんやりする。堀川に吹く夜の風が気持ちいい。