干された梅干しのある景色

今日は北野天満宮のがらくた市に行って来た。一年前にこの市に行ったときに僕はミノルタのハイマチック7sを1000円で手に入れた。今回も安いカメラがないかしらと思って探して歩いたのだけれども、1000円で買えるカメラはひとつも見つからなかった。そのかわりひさしぶりにたこ焼きを食べた。写真をいっぱいとった。境内いちめんに梅干しが広げられていたのには感動した。あんなにも強い太陽の光をめいっぱい浴びる梅干しの中には、なんだかすげえパワーが吸収されているんじゃないかという気がする。暑い空気に梅干しの匂いがほわほわと溶けて漂っていて、その匂いに母がつくる梅干しを思い出した。
今日もものすごく暑くて、ああ、また今年も夏が来たんだよなとしみじみする暑さで、もくもくと盛り上がったいかにも夏らしい雲を見ながら僕はたいへんうれしくなってしまった。それにしても「もくもく」という言葉はもくもくした感じにいかにもぴったりな言葉だなあ! こんなにもくもくした感じをぴったりと表現する「もくもく」という言葉がある日本語を使うとこに生まれて良かったよ、と思う。

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夕方から演劇の稽古。今日は通し稽古をした。もしかしたら「かや子のへそ」はお客さんをおいてけぼりにしちゃう演劇なんじゃないかと、ちょっと不安になった。そうならないようにしっかりと演出プランをたてないといかん。

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小島信夫『女流』読了。すごくおもしろい小説だった! 僕は本を読むときに赤えんぴつで線を引きながら読むんだけど、この『女流』は線をひく暇もないくらいにぐいぐい読んでしまって、読み終わった今ではどんなことが書かれていたかぼんやりとしか思い出せない。読み終わって小説の外に出てしまうと何がおもしろかったのか良くわかんないんだけれども、読んでいるときの、今まさに読みつつある状態のときはめちゃくちゃおもしろくて、こういうおもしろさっていうのはカニを食べるおいしさに似ているなあと思う。
おいしいカニを食べている最中にはカニのうまさが常に舌を刺激して、「ああ、うまいうまい」と思うんだけど、食べ終わって夜の道を自転車に乗ってるときなんかにそのうまさを思い出そうとしてみても、「俺が食べたカニはうまかったぞ」という情報みたいなものは確認できるけど、そのうまさそのものをもう一度舌が感じているわけではない。カニがどんだけうまかったかというのは、ぼんやりとしか思い出せない。