甥、半ズボン、かきぬき

生まれたばかりの甥のコータローに会って来た。
プレゼントは松田道雄の『私は赤ちゃん』と『私は二歳』。この本は一応育児書なんだけど、めちゃくちゃおもしろい小説みたいな育児書なので、子どもを持ってない人にもおすすめです。赤ちゃんが語り手で、「私がすわらされているのは、幼児用食卓イスだ。このごろは、このイスにすわらされたとたん人生が灰色になってしまう」といったようなことを、赤ちゃんの視点からどんどん書いて行くという本。この赤ちゃんがすげえクールでおもしろい。
コータローはちっこくてかわいかったなあ。寝ながら顔を真っ赤にしてじたばたと腕や頭を動かすさまは、いくら見ていても飽きなかった。それにしても、こないだまで半ズボンでぴょんぴょん飛び跳ねていたちびの弟が父親になってしまったとは! 

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*かきぬき
母さんは柔らかくて揉みしだかれたような女性で、父さんはさわることをこよなく愛したのは明らかだ。いつも顔を母さんの首にすり寄せ、服の上から乳房を手で覆い、うしろから抱き締めるーーそれに対して母さんは抵抗するふりをするだけだった(ぼくたち子供の前では)。母さんのそばにいるときの父さんは、犬を思い出させる。頭をいつも膝に乗せてきたり、鼻を腋の下や股ぐらに突っこんで満足しているあの犬であるーーといっても、父さんが母さんに対して乱暴だというのでは決してない。ただいつもさわっていたーー抱き締め、ぴったりとまとわりついていた。
ジョン・アーヴィングホテル・ニューハンプシャー