飛行機事故では死にたくない

金沢で買った深沢七郎の本がとてもおもしろい。深沢さんはかっこいい人だなあ。深沢さんみたいな人にはあこがれるけれども、逆立ちしてもまねのできる生き方ではないなあ。
深沢さんの本から少しかきぬき。
私は飛行機には乗らないようにしている。私は飛行機事故では死にたくないからだ。私は死ぬなら癌で死にたいと思っている。理由は、私の母親が癌で死んだからだ。癌で死ぬことは苦痛がひどい。だが、どんな苦痛でも母親と同じ苦しみなのだから本望ではないだろうか、どんな苦痛でも、(おっかさんは、こんなふうに苦しかったのだな)と母親の臨終の苦しみを察することも出来るのである。(略)親と同じ病気になれるなら恐れることもないし、また苦痛を忍ぶことも出来るのである。だから、癌の特効薬などがもし発明されても私はそんな薬はのまないことにしている。
深沢七郎『人間滅亡の唄』294ページ。
そう言えばジョージ・ハリソンもお母さんと同じ脳みその癌で死んでしまったのだったと記憶している。
今日は母の日だったけど、僕は何もしなかった。明日の朝、金沢のおみやげなんかをゆうパックでおっかさんに送ろうと思うので、おっかさんはもう少し待っていてください。