雨がすごかった

日曜日は図書館が五時に閉館するのだけれど、閉館間際にものすごいどしゃぶりの雨が降って来て、それで学生たちはびびってしまいぜんぜん帰ろうとしない。100人くらいの学生が玄関のホールにたまって動かない。ぎゅうぎゅうと学生がくっつき合っているのでもわもわとすごい熱気で、おまけに湿気もすごくて、息苦しくて気を失いそうな玄関だった。
結局図書館は学生の避難所となってしまい、図書館員がふたり残業して、館内にいる人が全員退館するまでそのふたりは帰れないということになった。
が、僕はお先に失礼してSさんとのデートの待ち合わせ場所に行く。
Sさんとは下鴨神社の御手洗祭に行くことになっていたのだけれども(おてあらいまつりではありません、みたらしさいですよ)、とにかくものすごい雨で、神社にはついたけれども、はだしで川に入るというイベントには参加できず、雨やどりにとびこんだお守りなんかを売っているところから出られなくなってしまった。雨がはげしければはげしいほどそれと張り合うみたいに蝉が大声でないて、雨の音もすごいし蝉の音もすごいし。
豪雨の中、いろんな屋台が出ていた。りんごあめ、チョコバナナ、くじ、射的、植木、OO焼、ジャンボフランク、唐揚げ、果物すくい、亀すくい。花火屋さんは雨が苦手らしく、品物の上に幌をかぶせてその向こうにおっちゃんがじっと座り、今日の売り上げの勘定か何かをしていた。
ちょっと小降りになったすきをねらって神社から脱出し、中華料理店に入る。靴からじょろじょろと水をながして足もとに水たまりをつくりながら晩ご飯を食べた。靴もズボンもびしょびしょになり、けっこうしんどかったけれども、行って良かった。あれだけ木がうっそうとしげる神社で、ぼたぼたと降って来る雨に囲まれていると、なんだかすげえ神聖な場所に来ているようで気分がよかった。いや、だいぶまいったのだけれども、それでもやっぱりなんだかいい気分だった。
Sさんにおみやげをもらう。深沢七郎小田実の対談の本。こんなの見たことないぜよ。よくみつけて来てくれたなー。やっぱし持つべきものは恋人であることだなー。それにしてもやっぱし深沢七郎はおもしろいなー。

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 アマゾンで買った『この世界の片隅に』が届いたので寝る前に読む。毎晩ちょっとずつ読もう。というつもりが、結局朝までかけて最後まで読んでしまった。読み終わったときはチュンチュンと鳥の声が聴こえ、外が明るくなりかけていた。
 このまんがはすごい! こうのさんが今までまんがを描いていろいろ身につけて来たものを全部出し切っている感じ。まんがにしかできない表現というのがこれでもかというほどぱんぱんに詰まっている感じ。たとえば利き手と反対の手で背景を描くとか、そんなのまんがにしかできないじゃないか。左手で小説を書いても右手で書くのとたぶん変わらないだろうし、左手で演劇をつくるとか、そもそも不可能だし、左手でギターを弾くとか、それでは音楽にならなそうだし。
過去の漫画家が描いて来たいろんなまんがのいいところをぱんぱんに吸収して、それをこうのさんのからだを通して表現したというような感じ。からだぜんぶで描いている感じ。
もうとにかくすごくて、ぎりぎりと歯ぎしりをしながら読んだ。こんなすごいことがまんがで表現できるのか!!
そんなわけできのうは今朝の五時過ぎに寝た。




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今日はTさんの伝記作成のためのききとりに行った。
Tさんはあいかわらず大量にしゃべってくれるのだけれども、また戦争のお話と仕事のお話で、家族のことがほとんど出てこない。出てこない話をもっとつっこんで聞きたいのだけれども、僕が口を挟む隙もないほどTさんは次から次へどんどんどんどん思い出を語ってくれるので、ここはひとつ腰をすえてじっとだまって聞きまくるのがいいのだろうか。うーむ、どうなのかしら。
それから今日は散髪をしてもらった。考えてみれば半年近く髪を切っていなかったのだな。だいぶさっぱりした。
月曜日は近くの銭湯が休みなので遠くの銭湯まで行ったのだけれども、風呂からあがってみればやはり今日もどしゃぶりで、ずぶぬれで泣きながらうちに帰る。