noise-poitrine2012-07-17

 土日を使って妻とふたりで東京に行き、甘もの会「はだしのこどもはにわとりだ」の上演をみた。庭をああいう風に見せるのか! というのが良かったなあ。俳優さんのではけのタイミングの良さも絶妙で気持ちよかった。ぱたぱたと庭に駆け込んで来る速度のきもちよさよ。塀の向こうをひょこひょこ歩く男4人も「はるばるやってきた」感が出てて面白かった。
 上演をみた後で俳優さんとかと中華料理を食べに行き、高橋名人の話でうんと盛り上がる。

 この人が高橋名人。ぼくらが小学生のとき、内閣総理大臣も校長先生も尊敬できなかったけど、高橋名人だけはみんなが尊敬していた。高橋名人の映画がやってくると聞けば、道路の左端を一列にならんで自転車をこぎ、遠くの映画館までみに行ったものだ。高橋名人のビデオがレンタルショップに並べば、取り合いで借りて来て、借りたビデオなのにすり切れるまでみたものだ。
 演出家の深見さんとは話がたりなくて、みんな帰った後でファミレスに移動し、僕と妻と深見さんでしゃべって、それでもまだ別れるのがなごりおしく、この日僕ら夫妻が泊めてもらうことになっていた出演者の宮部さんの家に移動し、そこで4人で朝の新聞配達の人がバイクに乗ってやってくるまでいろいろしゃべっていた。細かい話題はぼんやりと忘れてしまったけど、このときに東京のこととかをいろいろしゃべって、それで次回は東京をテーマにした戯曲を書きたくなった。
 次回作の題名は「東京サイバーパンク(仮題)」というのを適当に思いついた。田舎の高校生の話。田舎の高校生は東京に行ったことがない。行ったことがないけれど、東京についての情報はちらほらと入って来ていて、たとえば東京には井の頭線という変な名前の電車があって、東京の人はそれを「イノへ」と呼んでいるらしい、「イノへ」は「イノヘッド」の略らしい、「イノヘッド」は「井の頭」を英訳したものだ、などという知識だけは知らず知らずに頭にたまっている。憧れの先輩は東京の女子短大に進学するらしい。俺も同じ短大に入りたい。などと言って、短大の場所とかを調べてみたり、東京の地理を何となく調べてみたり。それにしても東京の地下鉄はぐしゃぐしゃでよくわからない。同級生のあるグループの間ではなぜか急に「ロカビリー」というものがはやり出し、休み時間に学校の廊下で「キャロル」の曲なんかをラジカセでかけて、「ロカビリー」を踊っている。東京では地下鉄にサリンがまかれた。地下鉄の出口にうずくまり嘔吐する老人がテレビに映っていた。SF好きの友達がいる。そいつが言うには、東京の地下鉄は江戸時代から走っていたらしい。半蔵門線という地下鉄は徳川家康を助けた忍者、服部半蔵の名前からとられたらしい。SF好きの友達はつくばで行われた科学万博に行ったことがあるらしい。あれは10年前だった。10年前の真夏、その友達が科学万博の見物をしているとき、田舎の高校生の家の近くの山に飛行機が落ちた。遺体が高校の体育館に集められる。体育館の床は血を吸って黒くなり、秋になると張り替えられた。あと6年で21世紀になる。21世紀になれば、10年前の科学万博で友達がみて来たような未来が本当にやってくるのか。いやな仕事はロボットがみんなやってくれて、人間は働かなくても気楽に生きて行けるようになるのか。21世紀にやってくるのは、タイヤのない車がチューブみたいな高速道路を走る未来なのか。原子力発電は核融合発電に変わっていて、安全でエネルギーの心配もないという21世紀が本当にやってくるのか。たとえばその未来の中にいる大人になった田舎の高校生は、たとえば東京に住んでいて、高いビルとかに住んでいて、その地下には江戸時代から走っているという地下鉄が走り、地下鉄の横には温泉が走る。地下鉄はかつては川だった。川には葦がはえていて、魚なんかもいて、それは田舎の高校生が今みている風景とほとんど変わらない。大人になった田舎の高校生が暮らすビルの下は海だったこともある。東京はリアス式海岸で、海岸の岬には神社がある。弥生時代の人が作った神社だ。
 とか、なんかよくわかんないけど、そんな話を書きたいと思う。