土曜日、仕事から帰って玄関を開けると浴衣姿の妻がいた。今日は近くの公園でお祭りがあるから、夜になったら行きましょう、そう約束をして朝僕は家を出たのだった。それで家に帰ってみると妻は浴衣を着て待っていて、僕も下駄を履いて、からからと下駄をならして公園まで行ってみる。6時すぎでも8月の空はまだぜんぜん明るくて、こんな明るい中でお祭りやってるのかしら、ちょっと早かったかしら、と小学校に隣接しているその公園に行ってみると、お祭りは公園ではなく小学校の校庭で行われていて、ものすごいにぎわい。校舎の前に設営されたステージでは小学生がピップホップを踊っていた。近頃のお祭りはこんなにも黒人文化を取り入れたものになっているのか、とお祭りに来るのはものすごい久しぶりな僕はびっくりした。京都市の中でもこのあたりは結構落ちついた場所っぽいと思っていたのに、あたりをみまわしてみると茶髪のヤンママみたいな人がいっぱいいる。せっかくお祭りに来たのだから屋台で買い食いしようじゃないかと、焼きそば、ビール、フランクフルト、たこやき、ビール。それから小学校の周りをぶらぶらあるいて、また校庭に戻ってかき氷。氷を食べると妻は急に元気をなくして座ってしまう。浴衣の帯がきついらしい。壁際にならべられた塗装のはげた平均台に座って一休みする。いつの間にかすっかり日が暮れた空にあがる緑色の花火を見る。花火を見ているうちに妻が回復して来たので盆踊りを見る。小学校の校庭の真ん中にやぐらがたち、その上でおじさんが音頭を歌い、やぐらの周りに円を書いて町内の人たちが踊る。踊る人はわずかで、踊る人よりも遥かに多い数の人たちが踊りを遠巻きに見ている。僕と妻も離れたところで踊りをみていた。しばらくすると妻が踊ろうという。輪に入るのが何だか恥ずかしいように感じてしまうけど、思い切ってうまそうな人の後ろにとびこむ。その人の踊りを見ながら見よう見まねで踊る。僕らの前で踊る人はにこにことこちらを振り返り、右、左、前、持ち上げて、後ろ、、、と声に出して動きを教えてくれた。こうやって初めて会う人と一緒にからだを動かして、いつまでもぐるぐると円を描き続けるのがすごく楽しい。見てるだけよりも、やってみるほうがやっぱり楽しい。