ちょっと前になるけれど、イギリスのブリストルという町からやって来た「two white cranes」という人のライブをユーゲで聴いた。「two white cranes」ってどういう意味なんだろう? やっぱりそのまんま「二つの白いクレーン」ということなのだろうか。クレーンっていうと無骨なイメージだけど、それが白い色をしているとなると、無骨なそれが急に夢で見た景色みたいな幻想風景に変わるような気になってしまうからおもしろい。曇った空に白いクレーンが二本のびている。今日は工事は休みなのか? それとも昼休みの時間なのか? クレーンは空中に何か荷物を持ち上げたままぴたりと止まって動かず、工事現場からは何の音も聞こえて来ない。工事現場の横の道を走る車の音だけが聞こえている。みたいな。
 Two white cranesさんの声は伸びやかで気持ちよく、大声を出しているわけではないけどちゃんと芯がある感じでこちらにまっすぐに伸びて来るようで、ささやくような声色の、それでもささやき以上のしっかりした声を40分くらい聴くうちに無性に気持ちよくぽかぽかとからだが温まり、眠っているのか起きているのか、というようなぼーっとした状態で歌を聴いていた。

 Two white cranesさんとタイバンで演奏をしていたかわでさんという人の演奏にはびっくりした。20曲ぶんほどある譜面をまず最初にシャッフルして、それから一枚一枚弾いて行くのだけれど、譜面にはどんなことが書いてあるのか、即興演奏みたいに聞こえたり、10秒くらいで終わってしまう曲もあったりして、ああ、あんなふうに自由に演奏しちゃって良いんだよなと、目からうろこが落ちる思いだ。だって、まずライブで演奏するとか、CDのために録音するとかを考えた時、ほとんどの人は3分くらいの曲を10曲とか20曲とか演奏することをイメージすると思う、というか僕は自分で曲を書くとき、とりあえず3分くらい、という枠をあらかじめ決めてしまって、その中でメロディーなりコード進行なりを考えることから初めてしまう。10秒でもいいんだ、おまえも10秒の曲をつくってみろと天からの啓示を受けたような気分だ。

 結局僕は今年、一度もライブをしなかった。来年の初めくらいに、できれば、去年ライブをやった「チョキチョキ」で、またライブをやりたいと思う。Yoji & his ghost bandの寺田君にも口約束だけれど「いっしょにやろう」と声をかけているのだった。