カツ丼

 我々夫婦の子供なのだから娘はぼーっとした女の子のはずだ、と予想していたのだがとんでもないことだ。私の腕の中で泣くときはTシャツだろうが腕だろうが手に触るものは力いっぱい握るし蹴るし。母乳を飲むまで決して絶叫をやめることがない。母子手帳には「仮死→蘇生」と書かれた娘だというのに。この力強さはいったいどういうことか。いや、これほど力強い娘だからこそ蘇生することができたということなのか。眼の前におっぱいを出してやれば、一度のけぞって勢いをつけてからがぶりとほおばる。飲み終わるとさっきまでの絶叫が嘘のようにおとなしくなる。しかし一時間もすればまた絶叫が始まる。娘は、ひょっとすると、朝からカツ丼を食べるタイプに育つのではないか。私は朝から食パンを一枚食べるのがやっとだというのに。