もうすぐ七夕です

 どうも娘がしゃべっているようなのだが、私の顔を見て「とと」というのは、「お父さん」と私に呼びかけているのだと解釈していいのかしら。「かか」ではなく「とと」が先にでてきたというのは、「か」という舌の根元を軟口蓋にくっつけて出す音よりも「と」という舌の先を硬口蓋につけて出す音のほうが出しやすいからなのか。それとも娘の名前に「と」が入っていて、我々が毎日「と」のつく名前を呼びかけているせいなのか。それにしてもこの娘がこれから育って行くこの国はどんどんきな臭くなっていくようだ。「最近の若者はぴったるんどるし、徴兵でもしたらええんや」などという声も聞こえてくる。テレビをつければ阿部首相。あの顔は俺きらいなんだよ、見たくないよ、声もしゃべりかたも嫌いなんだよ、そういえば「乾杯戦士アフターファイブ」の最終回が録画されてるはずだからそっちを見よう、とついつい現実逃避をしたくなるのだけど、しかしやっぱし嫌いでも何でも、ニュースは見ておいたほうがいいのじゃないか。このごろはどうも世の中の動きから目をそらしがちだけど、それは私の目をあえて世の中からそらさせよう、という阿部首相たちの作戦なのかもしれない。私が目をそらしている隙にいつのまにか日本は戦争をする国になってしまった。
 選挙には行かない、どこに投票しても同じでしょう、という若者がいるけど、その意見は自分で考えた意見というよりは、権力なり金なりを持っている人たちにそう思い込まされているだけなんじゃないか。権力や金を持っている人たちが、自分につごうのいいように世の中の空気を作って、その空気で一般ピープルをだまくらかそう、という作戦にまんまとひっかけられているのではないかしら。あと、選挙に行かない人が多いのは実は村上春樹のせいなのではないか、と今日私は機織りをしながらずっと考えていたのだった。村上春樹は若い頃のエッセイで、マイナス10とマイナス5とどっちかに投票しろと言われても、そんなの行かないよ、僕はまだ一度も選挙に行ったことがない、みたいなことを書いていて、だからそれを読んだハルキストは、村上春樹のまねをして投票に行かないんじゃないか。投票になど行かずに家でジャズを聴く、あるいはスパゲティーを食べる、もしくはコーヒーを飲みながら小説を読むのがかっこいいのだ、と思い込まされているんじゃないか。もしかしたらそれも阿部首相たちの作戦の一環なのか。

 もうすぐ七夕。娘は保育園で七夕飾りを作ったもよう。今日娘を迎えに行った妻が、笹と一緒に娘の作った七夕飾りを持って帰って来た。これはタコさんだろうか。