私は老後に何をしたらいいのか

 書道の好きだった祖父は80代で死んだんだった。もしもこの祖父が90代まで生きていたとしたら、90歳を超えた祖父はもう手が思うように動かなくなったりして、書道を続けていなかったかもしれない。
 本を読むのが好きな人でも、90歳を超えたら眼が悪くなったり、集中力が続かなかったり、読んでいる途中で最初の方を忘れたりして、読まなくなっちゃうのかもしれない。
 スポーツが趣味の人でも90を超えたらもうスポーツなんてできないだろう。車の運転もできなくなるだろうし、絵手紙なんか書いてもしょうがないし、ゲートボールなんて行ってもおもしろくなさそうだし、だから、もしかしたら、人は90代に入ったら、一日の大半をテレビを見るだけで過ごすようになってしまうものなのかもしれない。南側に大きな窓のあるあったかい部屋で一日ぼんやりテレビを見ているだけっていうのは、それはそれであんがい幸せなんじゃないか?
 いや、僕はしかし、テレビが嫌いなんだ。いや、テレビが嫌いというか、テレビでやっている番組の多くが嫌いなんだ。だのに、嫌いなのに、90歳になった僕はテレビを見るしかすることがなくなってしまうのか。いや、90歳を超えたら、自分がテレビが嫌いかどうかなんてどうでも良くなってしまうのか?