サイクリング

 日曜日、家族三人で自転車に乗り鴨川をサイクリングした。植物園が見えるあたりでおにぎりで昼食。気がつくと、眼の前に川を横断する飛び石がある。小さい子供とお母さんとか、老人と犬とか、外国人のカップルとかが次々に渡って行くのを見て、そういえば娘はまだこの飛び石を渡ったことがなかったな、と、僕も娘を連れて川に降りてみる。が、飛び石を渡って向こう岸まで行くのはちょっと危ない気がして、川の端っこの浅いところでちゃぷちゃぷと水遊び。3、4歳のお兄ちゃん、お姉ちゃんが裸足で石を渡って行くのをみて、娘は自分も真似をして靴を脱ぎたがる。というか、一人でドンドン脱いでしまう。「脱がなくてもいいんじゃない?」とか言う僕は、娘の安全のためを思っている、というよりも、スカートとかズボンとか濡れちゃったらめんどくさいなとか、着替え持って来てないし、もしも川に落ちたりしたら家に帰らなくちゃならないな、とか、親の都合ばかりを考えている。けど、きっとこういう暑いくらいに暖かい秋の日に冷たい川に素足を浸すのは娘にとって楽しいことのはずなので、それを僕の都合でやめさせるのは良くないと思い、娘の靴と靴下をあずかって、娘がころばないように体を支えてあげて、しばらくちゃぷちゃぷと遊ばせる。
 日曜日の鴨川にはいろんな人がいた。ジャグリングの練習をする青年、楽譜を見ながらトライアングルの練習をする男の人、橋の下でアカペラでハモる大学生風の男たち、よさこいを踊る若い男女、ラジオをかけっぱなしにして歩くおじさん、ちゃりんこで暴走する小学生、クラリネットでドレミファソラシドを吹く女の子、大きなピクニックシートを広げワインのボトルを十本くらい並べて赤い顔で談笑するおじさんおばさん、日陰に集まってお昼を食べてる100人くらいの集団、着物で歩く二人の若い女の人、などなど。楽器の練習をする人があそこにもここにもいる。自転車で通ると楽器の音は数秒で後ろに消えて行く。近くてずっと聴いていたら嫌になるのかもしれないけど、こうやってちょっとずつ聴きながら移動していくのは気楽で楽しいものだ、と妻と話す。
 河原町の「メリーゴーランド」で娘にお化けの絵本を買う。このごろ娘は両手を顔の前に持って来てだらりとたらし「おーばーけーだぞー」と両親をおどかして来たりして、お化けに興味があるようで、この絵本も気に入った様子。
 帰り道、河原でつんじに会う。「つんじじゃないか?」と声をかけた。娘はこの邂逅が気に入ったようで(邂逅はちょっとおおげさだけど)、家に帰ってきてから「つんじさん、ごろんしてたね」とか「つんじじゃないか?(という僕のものまね)」とか言って喜んでた。