おいらの船

 娘にどんなテレビ番組を見せるのがいいか。
 今から花嫁修業をさせるのならばやはりお料理番組ははずせない。今週に入ってから「今日の料理ビギナーズ」を録画して、夕方、保育園から帰った娘と一緒に観ている。5分間だけだからちょっとみるのに便利だし、かわいらしいアニメもあるので娘は興味深そうに観ている。

 以前『おかあさんといっしょ』を観ていたら、女の子の猫のキャラクターが、女の子はおしゃれをするものだ、おしゃれはがまんだ、あつくてもがまんしてブーツをはくのがおしゃれだ、だから女の子は大変だ、という歌をうたっていてたまげた。それ以来『おかあさんといっしょ』は観ていない。女の子はがまんしてオシャレをするものだ、なんて、そんな性的偏見を幼い子供に植え付けていいものか。そんなのは暴力なんじゃないか、と思う。

 半年くらい前から、土日の朝には娘と一緒にyoutubeを観るようになってしまった。が、なるべくならもっと大きくなるまでは娘をコンピュータから遠ざけておきたい、という気持ちもある。ので、際限なくいろんな映像を見せることはせず、もっぱら同じ映像だけを何十回も繰り返して再生している。娘を膝にのせて僕も同じ映像を観ている。ので、映像に映っている人たちに大変したしみを覚えるようになった。娘と毎週くりかえして観ているのはこの映像。

 妻が好きなバンドの歌、に、バンドとはたぶん関係のない人たちが映像をつけて、たぶん結婚式の会場か何かで流す用につくった映像だと思う。娘はとにかく風船に興味があり、それで毎週土曜日になると「『おいらの船は』観る!」と僕の手をひっぱってコンピュータの電源をつけさせる。のだったが、このごろでは風船よりもこの歌自体が気に入ったらしく、保育園への送り迎えの自転車の上とかでもこの歌を歌っている。
 そもそもは土曜日の朝7時20分からのピーター・バラカンさんの音楽番組のラジオを聴くために(インターネットで聴けるから)コンピュータの電源を入れていたはずなのに、今ではラジオを聴く代りに「おいらの船」ばかりを三回も四回も聴いている。この半年で100回ちかくは聴いたんじゃないか。そしてこれからもたぶん毎週休みの日になるとコンピュータの前に座ってこの動画を再生し続ける。