京都に戻る日。群馬の家の庭が好きな娘は思い残すことがないよう朝から庭で遊ぶ。父母の車に弟一家と僕一家が別れて乗り、高崎のシルクロードで昼食。シルクロードは今ではスパゲティー専門店みたいになっているけど、僕が子供時代はもっとしっかりしたイタリアンレストラン風の洋食屋さんで、ステーキなんかも食べることができて、僕の父が働いていた富岡の自動車屋の向かいに店があり(今ではチェーン店みたいになり、高崎とかに支店を出しているけど、その頃はたしか富岡に一軒あるだけのお店だった)、土曜日のスイミングスクールの帰りなどに母と子供たちとでここで食事をしたものだったし、ときどき仕事帰りの父が夜遅くにシルクロードでミックスピザを買って帰り、パジャマを着て歯を磨き寝る支度をしていた子供たちが「明日お休みだから、いいか」と夜更かしをしてチーズのたっぷりのったピザを食べたのだったが、父が「おみやげ」と差し出したあの平らな白い紙の箱の隙間から漏れ出てくるチーズのいい匂いが鼻によみがえる。ピザハットだのドミノピザだのピザ専門のお店なんてそのころ富岡には存在していなかった、シルクロードのピザはその後の人生で食べたどのピザとも違って具がごたごたと乗っていないシンプルなピザで(ピーマンの輪切りみたいなのが乗っていたんだったっけ? 薄く切ったサラミソーセージは確か乗っていたな、子供の頃の僕はあのサラミソーセージが大好物で「とびきりおいしいソーセージ」と呼んでいたものだった)、生地のところはカリカリというのともしっとりというのともモッチリというのとも違っていた、とにかくうまかった。今日、久しぶりでシルクロードのピザを食べたが、今ではシルクロードのピザはすっかり今ふうのオシャレなピザになっていてあのとき食べたピザとは別物だ。
そうそう、祖母に父が三歳のときの写真を渡されたのだった。3センチかける4センチくらいの小さな写真で、祖母はいくら虫眼鏡をのぞいてもこの写真がはっきり見えなくて、今では古い小さな写真を拡大する技術があるんだろう? おまえ、京都で写真を引き延ばして送ってはくれまいか? という写真。

近々プリントして送ろうっと。
帰りの新幹線でアイスクリーム。娘がアイスクリームを買ってもらえるのは年に2、3回。なので、今日は特別にアイスクリームを買おうか、というと娘は大喜び。