イギリス旅行41

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5月1日(水)晴れ。部屋の用意はだいたいできているけど、もしかしたらまだ清掃が入るかもしれないから、荷物は部屋の隅っこに置いておいてもらえればノー・プロブレムだ、と言ってホテルのお姉さんは部屋の鍵を渡してくれた。それから玄関の鍵も一緒に渡してくれて、私は今日は四時までで帰っちゃうから、あなたたちが例えば夜遅くホテルに戻ってくる場合なんかは玄関が施錠されてるから、この鍵で玄関を開けてくれ、とのこと。このホテルは「地球の歩き方」によると18世紀の建物を改装した建物だということで、2階建ての石造りのホテルで、部屋の数は10部屋くらいだろうか、客室はたぶん全部二階にあって、赤い絨毯を敷いた階段を上がり、同じく絨毯を敷いた廊下を部屋を目指して歩くんだけど、変に段があったり変にちょっとだけ折れ曲がってたり、なんだか妙に入り組んでいて迷路みたいだ、渡された部屋の鍵は映画で見るような古めかしい鍵で、部屋のドアの鍵穴も映画で見た鍵穴だから、おお、今日我々は二百年前だか三百年前だかに建てられた建物に泊まるんだな、と思ってなんだかワクワクする。僕らの部屋は何号室だったか忘れてしまったが、西側の通りに面した部屋だった。ハワースの町は南から北に坂道が上っていて、北の突き当たりに「オールド・ホワイト・ライオン」があり、「オールド・ホワイト・ライオン」で道が二股に別れていて、こういうのは三叉路というのか、三叉路の分かれ目のところにこのホテルが建っていて、この部屋の出窓が西を向いていて窓から外をのぞくと窓の下には四角い石を敷き詰めた細い通りがあり、出窓から南西の方を見ると道の向かいの建物の屋根の向こうに教会の屋根の一部や背の高い木が見える。ブロンテ姉妹のお父さんが死ぬまで勤めた教会だ。10だか20だか部屋があるけど、教会が見える部屋はそんなにたくさんはないはずで、これはもしかしたらかなりいい部屋に泊まれたのかもしれない。床はフカフカの絨毯だ、古い書き物机がある、ルノアールみたいな絵が壁にかかってる、ベッドは二人で寝る用のでっかいベッドと二段ベッドがあり、暖炉もある。お風呂場にはちゃんとバスタブもあるし、出窓だし、壁紙は赤い花柄だし、コンセントは10個くらいついてるし(どこでも好きな場所で電話の充電ができる!)、テレビもあるし、とにかくむやみに気分が盛り上がる部屋で、娘は「なんでここにもっと泊まることにしなかったの?」と言う。確かにこれは一泊しただけで帰っちゃうのはもったいないホテルだ、ゆっくりと2泊くらいしても良かったかもしれない。お風呂場のドアがまさかの引き戸で、最初はそれがわからず、娘はこの戸を押してみたのだけど、この引き戸は戸の上だけが固定されていて、固定されているというか、上のレールに戸がくっついていて上からぶら下がってるだけみたいな引き戸だったから、戸の下の方だけがブラーンと向こう側に押されて、なんだこれは、どうやって入るんだ、ブラーンと向こう側に押しておいて、腹ばいになってスキマからはって入るのか、などといぶかしんでいたらこれが引き戸だったんだった。荷物を降ろしてベッドに飛び乗ると、もう動きたくなくなっちゃって、けっこう長めに部屋でくつろいだ。