イギリス旅行22

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4月29日(月) ヴィクトリア駅の中にはマクドナルドがあって娘はマクドナルドでハンバーガーを食べたがったのだったが僕はせっかくロンドンまで来たのにわざわざマクドナルドなんて行きたくないよ、日本でも同じものが食べられるじゃんかさ、それにこのマクドナルドは持ち帰り専用のお店みたいだ、椅子もテーブルも置いてないじゃないか、とマクドナルドは見送ることにしたのだった。この頃には2時くらいになっていたのかな、ヴィクトリア駅から地下鉄に乗りホルボーンで降り、大英博物館を目指して歩いていく途中、どっかの十字路で信号待ちをしてるとまたマクドナルドが目に入り、まあ、他に適当なお店もないし、一度くらいはマクドナルドでお昼をすませるのもいいかもしれないな、安いし、といことで結局この日の昼食はマクドナルド。大きな液晶のタッチパネルで食べたいものを選んで注文する。自分らが食べたものの値段はもう覚えてないけど、ビッグマックが単品で千円してたのは覚えてる、さすがはロンドンだ。日本だと今はビッグマックはいくらなのだろう? 五百円くらいなのかな? 娘はハッピー・ミールを選び、おもちゃか絵本かどちらかがついて来るおまけのおもちゃの方を選ぶ。僕はチーズバーガーのトリプルを注文する。妻は何を食べたんだっけ? あんまりお腹が減ってないからと言ってドリンクだけにしたんだっけかな? ハッピー・ミールについて来たおもちゃはえらく平べったい。ボードゲームを折りたたんだやつか何かなのかな? とか言って、その場では開けずに大事に持って帰ってホテルで開けてみたんだけど、これはおもちゃじゃなくて絵本だった。どうもお店の人がおもちゃと絵本を間違って入れたみたい。こういうやつはその場でしっかり確認するのが大事だな。チーズバーガーのトリプルというものは日本のマクドナルドにもあるのかな? パンは普通に上と下に二枚あるだけだけどハンバーグとチーズが三枚ずつ入ってる。トリプルというものは日本じゃあんまし聞かない気がするけれども、まあ味はどうせ日本のと同じなんでしょ、と言いながらガブッとかぶりついてみると、なんかちょっと味が違う。日本で食べるのとほとんど一緒みたいなんだけど、もうちょっとパンチがきいてるというか、パンが香ばしいというか、肉の表面がカリッとしてるというか、チーズの臭みが少ないというか、日本のやつと微妙に違って妙にうまい。ははあ、マクドナルドのチーズバーガーっていうのはこういうことだったのか、こういう味を目指していたのか、チーズバーガーに胡椒がかかってる意味、ピクルスが入ってる意味って、こういうことだったのか、と納得する。やっぱりなんでも食べてみないと分からないものだな。味わってみもせずに「どうせ同じでしょ」とか言ってた僕はなんと浅はかだったことか。もうお昼どきをすぎていたせいなのかもしれないがお店の人は割と暇そうにしていて、女の店員さんは入口の近くの壁に寄りかかって馴染みの客とおしゃべりしてた、京都のマクドナルドではまず見ない光景。暇なときは自由にしてればいいじゃない、という空気がマクドナルドの中にも満ちている。ハンバーガーを食べ終わるとロンドン・レビュー・ブックショップの前を通って大英博物館へ。ロンドン・レビュー・ブックショップはポッド・キャストを配信していて、妻がこのポッド・キャストをよく聞いているのだった。いつも聞いてるポッドキャストはこの場所で録音されているのか、毎回作家とか詩人とかがゲストでやって来るのと同じ場所に自分は来てるんだな、と妻は感慨深い。とりあえず写真だけとって、ブックショップは帰りに寄ることにして大英博物館へ行く。ロンドンも京都と同じでオーバー・ツーリズム気味になってて、無料で入れる博物館はどこもたくさんの人が押し寄せるから予約をしておかないと延々待たされることになる。今回の旅行はスマートフォンが大活躍だ。僕らは昨日の夜だったか今日の朝だったかにスマートフォン大英博物館を予約していたから、並ばずにすっと入場できた。入場するとすぐに吹き抜けの空間みたいなところに出るのだけど、こんなのは前に来たときにもあったかな? なかったような気がする。前回来たときは入場してすぐ目の前にロゼッタ・ストーンが置いてあったように記憶しているが、今回大英博物館に来てみると入場してまず目の前に広がるのが広大なお土産ショップで、吹き抜けの空間の真ん中にある円形の部屋がぐるっと全部お土産屋さんになっていて、ミュージアムにちなんだものからあんまし関係のないものまで山盛りのグッズが並んでて、まずはここに引っかかってなかなか展示に進めない。ホテルに置いて来た「地球の歩き方」の大英博物館のところにちらっとでも目を通しておけばもうちょっとスムーズに見て回れたんだろうけど、この円形の部屋の左側から回ればすぐにロゼッタ・ストーンの部屋にいけたはずなんだけど、僕らは円形のお土産屋さんの右側を通ってしまい、とりあえずはエジプトの部屋に行こう、とミイラなんかが置いてある部屋に行ってみたのだが、まず一番最初に見たいと思っていたロゼッタ・ストーンが見あたらない。それにしてもミイラはやっぱり大人気で、すごいいっぱい人がいててんでバラバラの方向に動いたり止まったり指差したり口々にいろんな言葉を話したり子供はふざけたりしてるしで、なんかもう圧倒されてぼーっとなってくる。死んだあと何千年もたってから掘り返されて海を越えてよその国まで運ばれて博物館で展示されて毎日何千人だか何万人だかの人の目にさらされ続けるミイラはどんな気分か、と思う。恥ずかしいかもしれない。悔しいかもしれない。俺はピラミッドの中でひとり静かに暮らしたくてミイラになったのになんで毎日まいにち知らない人たちに、それも俺が生きてるときはまだ生まれてもいなかった後輩のやつらにジロジロ見られ続けなきゃならないのか、中には失礼にも俺を指差して笑うガキまでいやがるんだが、怒鳴りつけてやりたくても俺はもう死んでて手も足も出ない、ミイラになんてなるんじゃなかったよ……。次に中国のものが置いてある部屋に行ってみる。ここで古そうな壺みたいなのとかを熱心に見ている人のほとんどは、中国の人っぽかった。それからスマートフォンロゼッタ・ストーンの場所を調べたんだったかな? 一階の入ってすぐの部屋に置いてあるというので、人混みをかき分けて順路を逆回りするような形で、なんとかロゼッタ・ストーンにたどり着く途中、ヒエログリフが模様みたいに一面に掘られてる巨大な石棺とかをいっぱい見ながら入口までさかのぼっていくものだから、やっと辿り着いたロゼッタ・ストーンがなんだか小さく見えた。27年前の日記を読んでみると、僕はロゼッタ・ストーンに触ったらしいのだけど、今日ふたたびロゼッタ・ストーンの前に立ってみるとしっかりとガラス・ケースで保護されてて触れないようになっている。そりゃそうだ。毎日何千人何万人の人がなでていれば、いくら硬いロゼッタ・ストーンでもちょっとずつすり減り、しまいにはツルツルの石になってしまうんだ。