ゲイリー、焦る、トウモロコシ

日本語には「クーパー」という単語が普通に存在しているものだと思いながら高校生くらいまで人生を生きてしまっていたのだが、あれはなんとうかつなことだったか。父母が普段の会話でなにげなく使っていた単語だったため、ものごごろついたときには私の頭の中に「クーパー」があった。中学生の頃には「ゲイリー・クーパー」という俳優の名前も私の頭の中に加わったのだったが、「クーパー」が「ゲイリー・クーパー」に由来する単語だとは気づきもしなかった。
36歳になってふと気がついてみると、私は以前よりも頻繁にクーパーになるようなのだ。こないだも半生の鶏肉を食べたらすぐにお腹の調子が悪くなり、クーパーが3日ほども続いた。クーパーになると家事が手につかない。食事のあと片付けやオムツの洗濯などはすべて妻にまるなげし、私はふとんに横になり、ときどき起き上がってはトイレに行く。
今日になってやっとクーパーがなおって来たのだが、私の体重は48キロに減ってしまった。風呂場で鏡にうつった自分の胸をみて愕然とした。以前からあばら骨がよく見える体つきだとは思っていたが、鏡の向こうにいる自分の胸は、乳首いがいは全部あばら骨になっている。

こないだの土曜日、その他の短編ズのライブで、短編ズが上演する劇を初めてみた。かちっとした筋とかオチとかがあるわけではなく、そこで何が行われているのか、いまひとつはっきり見えては来ないし、演技もそれほどうまいわけでもないのだが、この人たちはこの劇をつくらなければいられなかったんだ、この劇をつくらなくては生きられないのだ、という切実さだけはちょっと他では経験がないくらい強く感じた。ので、劇を観たあとでは、なんだかみてはいけないものをみてしまった、という恐れを感じて、「いやあ、おもしろかったですよ」なんて気軽に短編ズに話しかけられない。目も合わせられない。

妻がマンガ『焦る!辻井さん』を買って来た。40歳で結婚して父親になったイラストレーターが子育てをしながらその生活をマンガに描く、というすじのマンガ。2歳のアカちゃんがだだをこねるところを笑いながら読むのだが、いや待てよ、うちの子ももう少し大きくなってしゃべれるようになったら、保育園に行く前にこの服はいやだ、あの服は着たくない、とだだをこねるようになるに違いない、これは大変なことになるぞ! と恐れを感じる。

焦る! 辻井さん

焦る! 辻井さん

キャプテン一家がうちに来たときに写真を撮ったのだった。キャプテンの娘さんの顔はあんましはっきり写っていないし、キャプテンもマスクをしてるから、肖像権的には許可とかなくてもいいかな、と無断で掲載してみる。

そしてうちの子はきのう人生初のトウモロコシを食べた。まだ奥歯がはえていないから噛むことができず、前歯をトウモロコシの粒に突き刺してチュウチュウと汁をすっている、という写真。こんなにうまいものは初めてだ、といったふうで、夢中になって何度もガシガシとかじりついていた。

人生初のヨーグルトも食べたのだが、これはまずそうに顔をしかめて口から出してしまった。ちょっとまだ酸っぱいものは苦手。