イギリス旅行27 ヨーク

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4月30日(火)そうだ、書き忘れていたけど電車の窓の外の緑の平野には羊もいたんだった。小さな子羊なんかもいて明るい青空の下で草を食べている羊たちが電車の窓の外をパーット行きすぎてくのを見ながら、僕はヘルシンキの空港で買ったビスケットを食べたり炭酸水を飲んだりしたんだった。ヨーク駅についたのは午前11時前で、駅の外に出るとすぐに城壁が見えて、ヨークでの観光の目玉はこの城壁内の旧市街で、旧市街には中世の街並みが今でも残っているというのだからそれを見に僕らはここまでやって来たんだったが、ヨークは中世の街並みだけを残しているわけじゃなくて、新しい店なんかもいっぱいあって、今風の服屋とか本屋とかが歩いてまわれる小さな範囲にぎゅっと詰まっていて、生活に必要なものは歩いて行ける範囲で全部そろう、という町で、この古い町並みを見ながら、お店屋さんのウィンドーをのぞきながら歩いてるとなんだか心がウキウキしてくる、ああ、旅行に来たなあ! という気分。僕らが予約したホテルは駅から600メートルか700メートルくらい離れてるところで、この短いようだけど重たいリュックサックを背負って歩くには微妙に長めの距離がまた地味に体力を奪う。ヨークには一泊するだけで、一泊してすぐに次の目的地に移動するために泊まるホテルは駅から近いところをとったほうが良かったのかもしれないとも思うが、そうするとやっぱり宿泊料が高くなるから、まあ、今回泊まるホテルは妥当なところだったのかもしれない、旧市街を縦断していく間にヨークの町並みを見ることもできたし。テスコ(という名前のスーパーマーケット)の前にホームレスらしきおじさんが座っていて、いや、ホームレスじゃなくてただ店の前に座って道ゆく人を眺めるのが好きな人だったのかもしれないが、体の大きなおじさんが座りこんで何かブツブツと独り言を言ってて、おじさんはお腹が大きいからTシャツのお腹のところがズボンまで届かないでヘソが出てたりして、ときどき笑いながらお腹をかいたりしてるこのおじさんをテスコの店の人は追い払ったりしない。ああ、人権を尊重する意識っていうのがこういうところにも出てるんだな、さすがイギリス人は懐が深いな、と思う。ヨークで泊まるホテルは「ハンプトン・バイ・ヒルトン・ヨーク・ピカデリー」。11時過ぎについたからまだチェック・インする時間じゃないんだけど、ホテルのフロント係の女の人に「予約した僕らが来たよ」と告げると、チェック・インの時間まで鍵つきの倉庫に荷物を預かってくれる。ロンドンで泊まったプレジデンシャル・アパートメンツはこぢんまりしたくだけた感じのホテルだったけど、このヨークのヒルトンは都会的というかビジネスライクというか、フロントの人はとびきりの笑顔で歓迎してくれるんだけど、馴れ馴れしい雰囲気をちっとも出してこないで、必要以上にこちらに立ち入ってこないのがこれはこれで余計な気を使わなくて気楽だ。ロンドンよりは宿泊料がちょっと安い。三人で一泊35000円くらいで朝食バイキングがつく。ホテルに荷物を置いて、旧市街の真ん中までまた引き返す、テスコの前をもう一度通る。娘はテスコ前のホームレスのおじさんを警戒していて、おじさんの前を通り過ぎるときは車道にはみ出んばかりにおじさんを避けて険しい顔で早足で通り過ぎる、もしかしたら息も止めていたのかもしれない。シャンブルズという通りに中世の家が残っている、と「地球の歩き方」に書いてあったので、それを見に行く。ここは僕はずっと前に一人で来たことがあったけど、そのときはあんまし感動もしなかったんだけど、あれは見たものを共有する人がいなかったせいもあるのかもしれない、今回家族と一緒に来てみるとなんだかむやみに楽しい。中世の町といえば今は「ハリー・ポッター」だ。僕らは南側からシャンブルズの通りに入ったんだけど通りに入ってすぐに「ハリー・ポッター」ショップがあって、そのせいかシャンブルズにはグリフィンドールのマフラーをした若い人なんかが通りを歩いてる。ハリー・ポッターの店には魔女の仮装をしたすらりとした若い店員さんがいて、うわあ、キレイな魔女だなあ、とか思ってたんだけど、しゃべる声を聞いたら男の人だった。店の外に出てキョロキョロと建物を見上げながらシャンブルズを歩き、何百年もそこに建ってたんだろう家の柱をなでてみる。柱の木は長年の雨と風で白っぽく変色し、年輪が浮き上がってザラザラになってた。