今日は寝坊をしてしまった

おととい、DVDで小栗康平の『埋もれ木』を観た。何年か前に映画館で観た映画。もう一度観てみて、やっぱりすげえ映画だなと思い、また、僕はこの映画が好きだなあとあたらめて思う。マーケットのたたずまいに心を惹かれる。

きのう、バイトが休みだったので台本を書こうとするが、ひと文字も書けず。ことばがちっとも浮かんでこない。おれは馬鹿になってしまったのではないかとあせる。あせってもしょうがないので、12時に寝ようとするが、ひどくむしむしして、おまけに蚊がうるさくて、ちっとも眠れない。眠れないんだったら起きていよう、明日のことなど知るものかと、むくりと起き上がってiMacの電源を入れてみたりするが、いかんいかん、明日おれは早起きをして奈良に大仏を観に行くのだからやはり眠らねばと思いなおし、iMacの電源を落とし、また寝床にもどる。それでもちっとも眠れない。音楽でも聴けば眠くなるかもしれないと考え、コンポのタイマーをセットして、小さな音で音楽を流す。が、気がついてみるとMDの一番最後の曲まで僕は聴いていた。しかたがないので枕もとの電気スタンドをつけて、こないだランダム・ウォークの安売りのかごで見つけて買ったKelly Linkの"Stranger things happen"を読み始めた。

けさ、松尾スズキと一緒に綱渡りをする夢をみて、松尾スズキのうっとおしさから逃げ出すようにして眼を覚ましてみると、枕もとの電気スタンドはついたままで、外は明るい。あれ、いつのまにか寝ていたよと時計をみると11時すぎ。ぼくは7時に起きて奈良に行くはずだったのだ。大仏をみて鹿をみて、なんかおいしいごはんを食べて、1時半から映画をみる予定にしていたのに、これではだめではないかとひどくあせる。「もー」といってうなる。うなっていてもしょうがないので急いで家を出てバスに乗る。ウォークマンを持って行こうとか、カメラを持って行こうとか思っていたのだけれども、うなっただけでとびだしてきたので両方とも部屋に置いたまま。結局映画には間に合ったけど、大仏も鹿もみられなかったし、お腹に入れたのは駅のキヨスクで買って電車で食べたサンドイッチだけ。

映画は『花の袋』という。25歳くらいの監督がとった高校生の話であるという情報を前もって聞いていたので、どうせ学生演劇に毛が生えたくらいのものなんだろうとか思ってあんまり期待していなかったのだけれども、それがどうしてどうして、なかなかおもしろい映画だった。2時間半あるんだけど、映画が終わったあとで、もうちっと長くてもよかったかも、なんて思った。
若い人にとっては恋愛が一番の関心ごとなんだなと思う。高校生のときや大学生のときにほとんど恋愛をしなかった僕はこの映画に映っている若い人たちが少しうらやましかった。
上映が終わったあとのトークで監督が、暴力っていうのは自分の感じている痛みを相手に伝えようとする表現なんじゃないか、みたいなことを言っていて、なるほど映画監督ともなると考えることが違うなと感心した。

帰り道、商店街で古本屋を見つけて何冊か本を買う。奈良の古本は安かった。
神谷美恵子ヴァジニア・ウルフ研究』
神谷美恵子『日記・書簡集』
神谷美恵子『若き日の日記』
島尾敏雄『硝子障子のシルエット』など。
僕はネットのブログとかはあんまり読まないんだけど、本になって売ってる日記を読むのは好きだ。

けっきょく、奈良まで行ったけど、大仏や鹿をみることができなかった。でも、おもしろい映画を見られたから、まあ良い日曜日だった。いつか天気が良い日にまた奈良に行きたいと思う。