ハーバーレス

 キャプテンから新曲が届く。「ハーバーレス」。僕が書いた歌詞にキャプテンが曲をつけた。聴いてみたらトランペットからバイオリンからアレンジが全部完成していてたまげる。しかもいい曲。軽快なテンポ。親しみやすいメロディー。そして爆笑。そうか、あの歌詞のところはあんなにも執拗に何度も繰り返すのか。この繰り返しのしつこさ、しかしさわやかなしつこさ、に爆笑。何度か繰り返し聴いたらさっそく娘が覚えてしまい、親が爆笑していた歌詞のところを歌い出す。が、あまり保育園とかで歌って欲しくないところなので、今後「ハーバーレス」は娘のいる前では「放送禁止」ということになってしまった。

 ひさしぶりに街へひとりででかける。なんだか娘や妻がいないとたよりない感じがする。昼ご飯はラーメン。よーし、今日はこのラーメン屋に行くぞ、と家を出る前から決めてはりきって出かけるが、ラーメンを食べるといつもうまいのは最初のひとくちか二くちくらいで、それからあとは、「ああ、やっぱり俺はラーメンよりもうどんが好きなんだな」あるいは「やっぱりラーメンはあそこの店で食べるやつの方がうまいかもな」と思いながら食べる。それなのに「せっかくだから」と替え玉を注文する。替え玉なんて注文しちゃうとけっこう千円ちかくなったりして、最近はラーメンも高い。塩分とりすぎだし、第一そんなに飲みたいと思ってもいないはずなのに、スープをほとんど全部飲んでしまうのはどうしてか。カウンターにひとりひとりしきりがついていて隣の客の顔が見えない。目の前にはすだれがさがり厨房の中も見えない。すだれがさっと開いて店員の腕とラーメンが出て来る。そのときも店員の顔はみえない。なんだか家畜になってエサを食べているような気分。あるいは近未来が舞台のSF映画にでてくるアジア風のスラム街でラーメンを食べているような。「ふうん、今はラーメン屋もこんなふうになっているのか」と感心する。が、もう二度とあの店にはいかないだろう。
 いくつか本屋をのぞく。大きな書店にいくと自分がどんな本を読みたがっているのかがわからなくなる。丸善ブックファーストブックオフ、ふたば書房。この中ではだんぜんふたば書房がいい。丸善ブックファーストにくらべると狭いけど、おもしろそうな本が整理されてならんでいる。あれもこれも欲しくなる。早川のSF文庫の解説目録と、庄野潤三の随筆を買う。と、書いてみて気がついたが、わざわざお金を出して解説目録を買わなくても、ただでもらえるやつがあったのかもしれない。まあ、いいか。

 晩ご飯は湯豆腐とはまちのお刺身ととろろとビール。もう、このごろはとろろさえあれば僕はごきげんだ。
 明日からは天気がくずれるらしい。