ラーメン、ビートルズ、『うさぎのくにへ』

昨日はギター教室に行った。生徒さんは三人集まって、三人から2800円ずつもらったので、経費とかをぬいても結構ふところがあったかい感じになって、だから晩ご飯はラーメン屋に食べにいった。ぼくが働く図書館の近くには天下一品があって、昨日はあまりどろどろしたラーメンの気分ではなかったのだけれども、ほかにはラーメン屋さんがないみたいなので、まあいいかと天下一品に入った。大盛りをたのんだら結構高くて780円。しかも食べ終わる頃には胃もたれみたいな感じになっていて、あ、おれの胃袋ももう若くなくなってきたのかと思い、少し寂しい気分になる。しかも天下一品は混んでいて、テレビではずっとベッキーが「こってり!」とかいって天下一品の宣伝をしているし、がさがさした気分になって帰った。帰り道にとなりの中華料理屋さんをみると、ガラガラにすいていて、照明もオレンジ色っぽい良い感じで、メニューを見てみると焼きそばの単品とかを食べれば天下一品よりも安いのだ。ぼくの頭の中には「ラーメン屋=安い、中華料理屋=高い」というのがあって、それでラーメン屋と中華料理屋が並んでいると迷わずラーメン屋のほうに入ってしまうのだけれども、実は中華料理屋に入った方が安くて、すいていて、落ちついて晩ご飯が食べられるのだった。

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国営放送でビートルズの番組を見る。ビートルズのアルバムはぼくは大学生の時に全部買ってもっていて、何回も聴いて、最近あまり聴いていないんだけれども、リマスターされたという新しいCDがとても気になる。ビートルズのアルバムは全部買ったのだけれども、「アビー・ロード」だけぼくは持っていなくて、それは大学生の頃に組んでいたバンド「デイ・トリッパーズ」のボーカルのTに貸したままついに帰って来なかったのだ。数えてみれば、Tに「アビー・ロード」を貸してから十二年ほどになる。だから新しくリマスターのCDを買うならば「アビー・ロード」をいのいちばんに買いたいと思う。ギター教室のおかげで懐が暖かくなったところでもあるし、音楽で稼いだお金は音楽に使うのがいいのじゃないか、と思うんだけれども、しかしちょうど今日で銭湯の回数券が切れるので、銭湯の方にもお金を使いたいし、CDか銭湯か、非常に迷う。
そろそろ国営放送の集金の人がやって来る時期なのではないかしら。集金のおじさんに金をくれと言われるとどうしても「NO!」と言えないでお金を払ってしまい、おじさんが帰ってひとりぼっちになってから「おれはなんて弱い人間なのか!」としばらく自己嫌悪が続くことになる。ああ、もっと強くなりたい。

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ギター教室の会場であるところのフィンタック! はお菓子屋さんであり雑貨屋さんであるのだけれども、昨日はここでジビュレ・フォン・オルファースという人の絵本を見つけて、この絵本があまりにかわいらしいので、ぼくは胸きゅんになってしまった。『うさぎのくにへ』では赤ちゃんがウサギの毛皮のコスプレをしていて、耳がぴょこんと飛び出ているのとか、毛皮がもこもこしているのとか、赤ちゃんが猟師に驚いて走っているときの表情とか見ていると「もう、たまらん!」といてもたってもいられないような気持ちになり、「買って帰ろうかしら」とかも少し思ったのだけれども、これはフィンタック! にあるから良いのだろうなと思いなおして買わずに帰った。今日もあの絵本はフィンタック! にあっていろんな人の目にふれておるのだなと思えばそれでけっこう楽しい気分になれて、それをぼくが買ってきてひとりじめしてもぼくはきっと本棚につっこんでおくだけになってしまうだろうし、それよりは買わずにおいてフィンタック! に行けばオルファースがあるということだけ覚えておけば、次にフィンタック! に行くことが楽しみにもなるし、所有欲とか物欲とかの欲望のままに何でも手に入れたがるということはもうこれから先なるべくやめてしまおうと思う。本も図書館で借りればいいし、音楽もyoutubeとかで聴けばいいし、おいしそうな果物とかもスーパーに並んでいればそれでいいし、うまい寿司もぼくが食べなくても誰かが食べればそれでいいのだし、いい音のギターも楽器屋さんに置いてあればそれで充分なのだし、きれいな女の人とか美少女とかも道を歩いてるのを見てれば満足だし、ぼくがそれを手に入れなくても世界はぼくと無関係にちゃんと運動し続けているのだと思えば、ぼくが死んじゃっても世界は続くのだというなんだか安心した気分になれて、なんだかわりとニコニコと生きて行けそうな気にもなる。